観測成果

最も遠いクエーサー (赤方偏移5)

1999年1月28日


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【観測条件】
天 体 名:最も遠いクエーサー (赤方偏移5) (おうし座)
使用望遠鏡:すばる望遠鏡(有効口径8.2m)、カセグレン焦点
使用観測装置:CISCO (近赤外線カメラ)
フィルター:Jバンド(1.25 ミクロン), K'バンド(2.15 ミクロン)
カラー合成:青(Jバンド), 緑([Jバンド+K' バンド]/2), 赤(K'バンド)
観 測 日 時:世界時1999年1月14日
露 出 時 間:800 秒(J), 1600 秒(K')
視   野:110秒角 × 1101秒角
画像の向き:北が上、東が左

【説 明】
 クエーサーは宇宙で最も大きなエネルギーを放っている天体であり、その正体は遠方の銀河の中心にある巨大なブラックホールだと考えられている。そうした巨大ブラックホールは太陽系程度の大きさを持つが、その中に太陽の10億倍もの質量が入っているはずである。クエーサーは非常に明るいために、遠方にあっても比較的観測しやすい。この画像にあるクエーサーはスローン・デジタル・スカイ・サーベイによって発見されたもので、現時点で知られている範囲では宇宙の最も遠くにある。我々からの距離は、ビッグバンを今から150億年前とした場合、約140億光年である。現在発見されている天体で、このクエーサーと同じくらい遠方にあるもの(銀河)は数個しかない。このような天体はビッグバン後10億年程度の時点のものであり、現在の宇宙の年齢と比較すると非常に若い天体であることが分かる。宇宙膨張のために、遠くの天体は我々から非常に速く遠ざかっているように観測される。そのためのドップラー効果によって、この天体がもともと放った光の波長が6倍長くなって我々に観測される。このクエーサーは近赤外線カメラCISCOで撮影したものだが、実際にはクエーサーから放射された紫外線を見ていることになる。

 クエーサーのような天体がビッグバン後比較的早い時期にできるためには、もともと宇宙のなかで密度の特に濃い場所にこれらの天体が存在していたからではないかと考えられている。もしそうなら、遠方のクエーサーのまわりでは銀河が形成されつつある可能性もある。そのような原始銀河を検出するには、すばる望遠鏡のような高性能の大型望遠鏡が必要である。この画像の中に見られる暗くて赤い点はみな銀河だが、クエーサー自身に比較してはるかに我々に近い距離にある。

 

 

 

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