すばる望遠鏡について

観測所長

あいさつ

ハワイ観測所長 宮﨑 聡

photo: ハワイ観測所長 宮﨑 聡

「文化は享受するだけでなく、自ら創造するものだ」
小平桂一氏をはじめとする私たちの先輩天文学者達は、このような強い思いを抱き、多くの技術者と協力して、すばる望遠鏡を建設しました。1999年1月のファーストライト以来、すばる望遠鏡は、他の望遠鏡では成し得ない、世界的にユニークな科学成果を次々と生みだしています。どうしてこのようなことが実現できたのでしょうか?すばる望遠鏡が建設された1990年代の終わり頃には、世界中で口径8-10メートル級の望遠鏡が9台も作られた時期でした。他の望遠鏡の設計も参考にしたかもしれませんが、それらをそのまま模倣していただけでは、今のすばる望遠鏡はなかったはずです。性能目標を自ら定め、その達成を目指した数多くの方々の努力が結実して、すばる望遠鏡は実現しました。望遠鏡完成後も、焦点面に設置する観測装置は次々に更新され、さらにユニークな観測を可能にしています。「文化創造」の気概は次世代に確実に引き継がれていると思います。また、世界にここにしかないものは、世界中の天文学者が利用を希望します。この異文化交流により、さらに新しい文化も生まれるでしょう。

ハワイ島マウナケアに設置されたすばる望遠鏡は、日本国外に初めて建設された日本の研究施設であり、計画当初から前例のない問題が次々と生じました。どんな困難に直面した時でも、日本やハワイをはじめとする多くの人々が常に力強く支えてくださったことは、感謝の念に堪えません。完成記念式典等の節目節目には、ハワイ先住民の人々が祈りを捧げてくださりました。その祈りは先住民が世代を超えて伝えるハワイへの思いであり、ハワイ観測所所長として、その声に耳を傾け 、絶えず学んでいく所存です。

20年を超えるすばる望遠鏡の歴史にわたって築いてきた地元ハワイの人々との関係は、すばる望遠鏡の揺るぎなき礎となり、文化となって、現在の活動を支えています。この文化を受け継ぎ、ハワイの人々の声を聴きながら地域に根差した活動を一層進展させていきます。

引き続き、卓越した観測環境であるマウナケアでの天文学からもたらされる恩恵をより多くの人々に届けられるよう邁進してまいります。