トピックス

3年目を迎えた、地元ハワイ島での天文教育プログラム

2007年5月14日

 2006年6月5日のトピックスで、ジャーニー・スルー・ザ・ユニバース(以下「ジャーニー」と記す)という、教育プログラムを紹介いたしました。3年目を迎えた今年は、ジェミニ天文台、ヒロ・ラウパホエホエ校区教育委員会・イミロア天文センター・ハワイ大学ヒロ校が主催者となり、すばるも色々な面で協力しました。(ラウパホエホエとは、ヒロの北に隣接する地区の名前です。)2007年1月19日から26日の1週間で、先生向け研修(teacher training)、子供と家族向け夜の講演会(family science night)、学校における出前授業(classroom visits)の三種類のイベントが行われました。

 今年の大きな特色は、マウナケア天文台群で働く地元の研究者や専門家が主体となって出前授業を行ったことです。昨年までは地元と米国本土の研究者がペアとなって学校を訪問し、地元研究者は本土の研究者の前座として短い話をするにとどまっていました。しかし今年は、32人の地元研究者1人1人が1日3、4時間まるごと授業しました。参加した地元研究者の数が1.5 倍に増えたため、一回あたりの参加クラスを数を少なくし、より対話型の授業を行うことができました。本土からの研究者2人を加えた34人で、ヒロ・ラウパホエホエ地区の小学校から高校まで18校、約8000人の生徒の前で話をしました。増えたのは研究者の数だけではありません。研究者の授業を手伝う世話人も昨年の9人から23人と、2.5倍増になりました。世話人の中には地元の有力者が多く含まれていますが、ジャーニーで体験した授業と天文学の楽しさを今後もコミュニティの中で語ってくれることでしょう。

 すばる望遠鏡からは、石岡涼子、石田キャサリン美恵、高見道弘、林左絵子、眞山聡、スコット・クラインマン、ディーン・デ・サと、臼田-佐藤功美子(すばるの連絡係)が地元研究者として参加しました。8人で9校を訪問、30回授業を行いました。合計1100人の生徒がすばる研究者の授業を聞きました。自分の研究内容と絡めて星・惑星系形成や系外惑星、ダークマターやダークエネルギーの話をした人、すばる望遠鏡の最先端の技術を紹介した人、CDで作った分光器を片手に電磁波とスペクトルの説明を行った人、今話題の冥王星が惑星でなくなった理由を説明した人、火星で遭難したという想定のもと、地球外環境で生きていくための条件を生徒に考えさせた人など、各自がテーマを選び、学年に応じた授業を行いました。8人中5人は英語を母国語としないスタッフですが、たとえ英語が完璧でなくても内容で勝負!と工夫を凝らした授業を行い、先生方から高い評価を得ました。

 また、ジャーニー週間後、先生向け特別講習がすばる望遠鏡のあるハワイ観測所山麓施設と、ジェミニ天文台山麓施設で、プログラムの一環として行われました。5つの講習のうち、2つをすばるの臼田-佐藤功美子と石田キャサリン美恵が行いました。身近なものと宇宙をつなげた講習が好評でしたし、すばると先生・教育委員会間のより良い関係を築く絶好の機会となりました。



 最初はNASAを含む本土の組織と研究者、専門家が主導となり始まったジャーニーも、3年目になって地元主体で大成功をおさめ、参加した研究者、コミュニティのメンバー共に好印象を持ちました。授業をしていて生徒の関心と知識の上昇を感じた研究者もいました。また、参加者の中には「常連」も含まれることから、研究者、世話人、主催者間の交流が深まってきているように思えます。世界有数の観測所群が並ぶハワイ島にて、今後も地元の人たちが天文学への興味と理解を深めるための努力が続くことでしょう。そして、ジャーニー・プログラムが最終年を迎える5年目2009年には、国際天文年にちなんだ色々なイベントと共に、天文学教育・普及活動がますます盛んになると期待されます。




ジャーニー・スルー・ザ・ユニバース(2007年)のサイト
メインページ
http://www.gemini.edu/journey
先生向け特別講義コースのページ
http://www.gemini.edu/index.php?option=content&task=view&id=209

ジャーニー主催者と2007年に参加した地元と本土からの研究者たち
(2007年1月21日、研究者向けワークショップの後イミロア天文センターにて)



画像等のご利用について

ドキュメント内遷移