近赤外線分光撮像装置 IRCS
(Infrared Camera and Spectrograph)

赤外線観測の定番

 波長が1~5 ミクロンの近赤外線での撮像観測・分光観測といった基本的な観測モードをカバーするカセグレン観測装置です。補償光学装置 (AO) と共に使用することで最大の能力を発揮するように設計されています。カイパーベルト天体などの太陽系内天体から褐色矮星、星形成や銀河、高赤方偏移天体まで様々な天体の分光的研究に用いられます。

高解像度拡大画像 (232KB)

 

年老いた星が作る「弾丸」と「角」のような構造

 惑星状星雲 (AFGL 618) の近赤外線画像。進化をとげた星が、表面からガスや塵を放出しています。星本体は星雲の中央にありますが、濃い塵に隠されているため見えません。この天体は、2つの方向に物質を放出しているのが特徴で、その理由はいまだにあきらかになっていません。この観測で、右方向の星雲の先に3つの「弾丸」のような構造がみつかり、一方、左方向の先には「角」のような構造がみつかりました。これらの構造は、星雲の形が双極になったことと深く関係しているとみられ、その解明のため電波での観測などが進められています。

 

観測成果:年老いた星に見つかった「弾丸」と「角」のような構造 (2002年9月29日)

 

クェーサーと重力レンズを使ってガス雲を探る

 赤方偏移3.9 (120億光年) のクェーサー (APM08279+5255) のスペクトル。右側ほど波長の長い光が写っています。光の弱い部分 (MG II と示された部分) は、手前の銀河間ガス中のマグネシウムによる吸収線であり、これらの銀河間ガスの状態についての情報が得られます。この種の観測は従来可視光で行われてきましたが、IRCSは赤外線でもこの観測を可能にしました。これより遠方のクェーサー観測を延ばしていく上で重要な進歩です。このクェーサーは手前の銀河による重力レンズ現象で二つに分かれて見えます。その間の角距離はわずかに0.4秒角 (1秒角は1度の3600分の1) ですが、この観測では二つの像 (図のAとB) を分離してスペクトルを得ることに成功し、吸収を起こしているガス雲のサイズについても研究が可能となりました。

 

観測成果:波面補償光学装置 AO による初の分光観測 (2001年1月16日)

 


 コラム:IRCS

 IRCSは、すばるが完成した当初から稼動し始めた装置の一つです。この装置は、近赤外線で天体像を撮影するカメラと、高い波長分解能を実現しながらも、広い波長域に渡った分光器を内蔵しています。

 IRCSは太陽系から銀河系外の銀河など幅広い種類の天体の観測に対して常に高い性能を発揮できる装置になっています。もう一つの特徴は、補償光学装置 (AO)を用いた観測が行えることです。星の周りや銀河の構造などを詳しく調べることができます。

 IRCSはハワイ大学との協力のもとで開発された装置で、ネジの一つに及ぶまで繊細な注意を払って開発されたため、非常に安定して動いています。AOを取り付ける装置というのは、ただAOが積めるかというのが重要なのではなく、AOの分解度がシャープな分だけ、レンズなどを配置する精度も信じられないほど高いレベルを要求されます。

 近未来の課題としては、とにかくアップグレードを続け、常に性能を維持し、かつ、以前よりも良いものにしていく努力を日々続けることです。

(IRCSサポートアストロノマー寺田宏さんとの2002年末のインタビューより)

 


 

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