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すばる望遠鏡の共同利用観測

2000年10月23日

 9月には、望遠鏡の調整作業やIRCSとFOCASの試験観測が引き続き行われました。また共同利用観測のプログラム小委員会 (Time Allocation Committee、TAC) が9月18日に開かれ、最初の共同利用観測に対する天文学者からの観測提案書 (プロポーザル) の審査が行われました。

 いままで行われてきた観測や、記者発表・科学論文として発表された成果は、ハワイ観測所の職員や観測装置開発グループによる望遠鏡や装置の試験調整中のものです。共同利用研究機関である国立天文台ハワイ観測所および すばる望遠鏡の目的は、世界中の天文学者から寄せられる観測提案のもとに行われる最先端の共同利用観測です。1998年12月のファーストライト以後、続けられてきた調整作業の結果、今年6月に共同利用観測の実施が決定されました。いままでに試験観測が行われてきた観測装置は7台あります。初めての共同利用観測 (Semester S00) では、本来の性能が十分に確認された IRCS と Suprime-Cam の2台が利用できることになりました。Semester S00 の期間は、2000年12月から2001年3月の4ヶ月間です。同時に望遠鏡の調整作業や装置開発グループによる試験観測も行われるため、共同利用観測として利用できるのは、わずか36夜です。そのため共同利用観測へのプロポーザルには、一つの申請につき観測日数は最長3夜までとなっていました。このような状況にもかかわらず、Semester S00 に対して 114のプロポーザルがあり、合計223夜の希望がありました。希望の夜の数 (223夜) を利用できる夜の数 (36夜) で割った競争率は、実に6.2倍にもなります。このような状況は、一流の天文台へ観測提案を行う際にはよくあることです。そのため、多くの優れたプロポーザルに観測時間を与えることができないということは避けられませんが、プローザルの審査は、すばる望遠鏡の運営の中でもとても大切な役割です。

 各プロポーザルは、下の5つの分野のいずれかに対して申請をします:

  • 太陽系
  • 星と銀河系
  • 星形成と星間物質
  • 系外銀河と活動銀河核
  • 大規模構造形成と宇宙論

 提出されたプロポーザルは、同じ分野を研究する5名の審査員に送られ、科学的な観点から点数がつけられます。申請者と同じ分野の研究者が審査をすることから、このような手続きは同輩審査と呼ばれます。その後、例えば観測の目標である天体が申請された観測時間で実際に検出することができるかなどの技術的な評価も受けます。

分野別のプロポーザルの数と申請のあった夜の数
(色は上記分野のリストに対応)

 

 TACは、上記の 5 つの分野から一名ずつと、より一般的な分野から3名の合計 8名の天文学者からなります。審査員のつけた結果をもとに、9月18日にハワイ観測所の山麓施設において、どのプロポーザルの観測を認めるかについて審議が行われました。

 最終的に共同利用観測の36夜は、26のプロポーザルに割り当てられることになりました。その内訳は、19夜が16の IRCS による観測、17夜が10の Suprime-Cam による観測です。TACのメンバーが、より短い時間で成果が得られると判断したプロポーザルの中には、申請よりも夜の数が少なく割り当てられたものもあります。

分野別の観測が認められたプロポーザルの数と割り当てられた夜の数
(色は上記分野のリストに対応)

 

 今回の共同利用観測に対して、観測が認められたプロポーザルのリストはこちらです。TAC により割り振られた共同利用観測の他に、ハワイ大学天文学研究所 (IfA) は、すばる望遠鏡の全観測時間の15%を利用できることになっています。IfA がマウナケアの科学研究区域の管理・運営していることから、マウナケア山頂にあるすべての天文台は同じように IfA に観測時間を割り当てているのです。IfA から申請されたプロポーザルは、別の TAC に送られて審査が行われます。さらに二つのTACが認めたプロポーザルに同じ内容のものがないか確認をします。

 同利用観測を行う最初の天文学者は、12月上旬にハワイ観測所を訪れる予定です。その時までに、2001年4月より始まる次期の共同利用観測 Semester S01A のアナウンスがなされていることでしょう。望遠鏡と観測装置がより安定し、調整作業を行う時間が少なくなるにつれて、共同利用観測に割り当てられる時間は増えていくことになっています。

 

 

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