観測成果

100億光年遠方の活動銀河と銀河団

1999年6月10日


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【観測条件】
天 体 名:電波銀河 3C324 とそれを囲む銀河団
使用望遠鏡:すばる望遠鏡 (有効口径 8.2 m)、カセグレン焦点
使用観測装置:CISCO ((近赤外線カメラ)
フィルター:K'バンド (2.15 ミクロン)
カラー合成:赤色:すばる望遠鏡、近赤外線K'バンド (2.15 ミクロン)
      緑色:ハッブル宇宙望遠鏡、可視光赤 ((0.7 ミクロン) (*)
      青色:ハッブル宇宙望遠鏡、可視光青 ((0.45 ミクロン) (*)
観 測 日 時: 世界時1999年4月2日
露 出 時 間:800 秒
視   野:約 1.5 分角×2分角
画像の向き:右ななめ上が北 (ふれ角は上から右へ 38 度)、左ななめ上が東
位   置:赤経 (J2000.0)= 15 時 49 分 48.9 秒、赤緯(J2000.0)= +21 度 25 分 38 秒

【説 明】
 すばる望遠鏡の赤外線画像を、ハッブル宇宙望遠鏡の可視光像と合成することにより、100 億光年遠方の活動銀河の姿と、それをとりまく銀河団が浮かび上がった。

 画像の中央やや右上に、小さいが赤色と青色がいりくんだ天体がある。左上隅の囲み内に示し たのが、この活動銀河 3C324 の新しい姿だ。およそ 100 億光年の彼方にあり、強力な電波を放つこの天体は、ハッブル宇宙望遠鏡による観測で、激しくジェットを吹き出していることがわかっ た。囲み内の斜めに延びる数珠玉のような青い色がハッブル宇宙望遠鏡によるジェット、その中心からぼやっと広がる赤い色の部分が、すばるがとらえた銀河本体の姿であり、それが巨大な楕 円銀河であることがわかる。宇宙が未だ現在の大きさの半分以下でしかなかった宇宙膨張の初期の頃に激しく活動していた銀河の、このような立体的な姿がとらえられたのは、めずらしい。

 また、大きな画像の中央やや右寄りに、3C324 の周りに散らばる 15 個あまりの赤い小さな光点 の群れは、すばるがとらえた 3C324 の仲間の銀河団である(右上の点線の外側は、ハッブル宇宙望遠鏡のデータのない領域なので除く)。図中で青く見える天体は、ハッブル宇宙望遠鏡がとらえた 手前にある星や銀河である。これに対して赤い銀河は、ハッブル宇宙望遠鏡の可視光映像ではほんの微かにしか見えておらず、すばる望遠鏡の赤外線映像によって初めて、明るくシャープにとらえ られた。これらは生まれてから 10 ~ 30 億年を経た銀河で、既に大規模な星の形成を終えて赤っぽい星が多く、宇宙膨張による赤方偏移と相まって、赤く見えるのである。

 地上望遠鏡として最高度の性能を達成したすばる望遠鏡は、そのシャープな赤外線映像をハッブ ル宇宙望遠鏡のシャープな可視光映像と組みあわせることを可能にした。その結果、100 億光年彼方の、華やかな銀河活動のぺージェントの映像が得られた。

(*) These images were created with the support of the Space Telescope Science Institute, operated by the Association of Universities for Research in Astronomy, Inc., from NASA contract NAS5-26555.

 

 

 

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