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縁の下の力持ち、観測装置交換用のロボット台車 CIAX

2016年4月27日 (ハワイ現地時間)

  すばる望遠鏡の大きな特長の一つは、可視光線から赤外線にかけての様々な波長やモードで観測が可能なことです。そのために多くの観測装置が準備されています。そしてハワイ観測所のデイクルーがその夜の観測に合わせて日中に観測装置をセットアップします。

  例えばカセグレン焦点で使う観測装置には、可視光線用・近赤外線用・中間赤外線用の3種類があり、それぞれが縦横高さ各2メートル・重さ2トンにもなる巨大な「カメラ」です。これらの観測装置を週に一度ほどの頻度で慎重に交換する必要がありますが、そこで活躍するのが専用のロボット台車 CIAX (サイアックス、Cassegrain Instrument Auto eXchanger) です。


動画: CIAX を使ったカセグレン装置交換作業の様子。(クレジット:国立天文台、撮影・編集:Pablo McLoud・千葉禎治・藤原英明)


  この動画は、可視光線用の微光天体撮像分光装置 FOCAS から冷却中間赤外線分光撮像装置 COMICS に交換する様子を収めています。CIAX のおかげで一連の交換作業を数時間で終えることができるのです。

  CIAX は床に埋め込まれているマーカーを検知し、決められた位置まで自動走行できます。待機場所から出て来た CIAX が、それまで望遠鏡に取り付けられていた観測装置を迎えに行きます。CIAX 自身が少し「背伸び」し、一方望遠鏡側からは電動ボルトを使って観測装置が下降します。観測装置が CIAX に接したら、回転機構が少し回り、観測装置上面の穴から電動ボルトを引き抜きます。観測装置を受け取った CIAX が「背伸び」をやめ、車輪で再び自動走行。その装置の格納庫まで運び、固定用の機構にぶら下げます。電源・信号線・圧縮ガスや冷却用の配管は自動コネクタで接続されるので、人手は必要ありません。そして次に使う装置を受け取りに行き、今度は逆の手順で望遠鏡に取り付けます。ここで CIAX の役目は終わり。自分の待機場所に戻るのです。

  マウナケア山頂域には電波望遠鏡もあるため、電波を発する機器が一切使えません。このため CIAX と望遠鏡との間の通信はすべて有線で行います。そのケーブルを支えているのはなんと釣り竿。釣り竿の柔軟な動きが、作業中にケーブルを取り扱いやすくするための秘密なのです。釣りが盛んなハワイならではの工夫とも言えます。

  CIAX を国立天文台のエンジニアとともに開発したのは、愛知県の企業でした。「無人搬送車」を得意とするこの企業の社長さんが自らマウナケアまで来て、導入からアップグレードまで行っています。巨大で精密な観測装置を安全に交換するための、まさしく縁の下の力持ち。定期メンテナンスのために来た社長さんは「これほど長く使ってもらえるとは思ってもいませんでした。長く持ちこたえられるよう、様々な工夫をしたかいがありますね」と言って、また次の作業のために屈み込んでいました。





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