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ハワイ観測所スタッフ、太陽系外の「カイパーベルト」を発見

2015年5月29日

  国立天文台ハワイ観測所 (すばる望遠鏡) の研究者が率いる国際研究チームは、ジェミニ南望遠鏡を使った観測により、ケンタウルス座の方向にある太陽型星 HD 115600 の周りに、塵がリング状に分布した構造があることを発見しました (図1)。塵のリングの大きさが太陽系のカイパーベルトと同じくらいであることなどから、この恒星は幼かった頃の太陽系の姿に似ているかもしれないと、研究チームは指摘しています。


図1

図1: 今回観測された HD 115600 の塵のリング。見た目としては土星の環を横から眺めた姿に似ています。とても明るい中心星は黒く隠されていますが、中心星の位置が十字印 (+) で示されています。またリングの中心が丸印 (◯) で示されていますが、中心星の位置と少しずれていることがわかりました。文字や記号が入っていない画像はこちら。(クレジット:Thayne Currie/国立天文台)


  太陽系の海王星軌道の外側にはカイパーベルトと呼ばれる領域があり、そこには主に氷から成る天体が多数存在します。これら氷天体は惑星形成の名残とも考えられるため、カイパーベルトは若かりし頃の太陽系の素顔に迫る上での手がかりを与えてくれます。また、太陽に似た若い恒星にある「カイパーベルト」を観測すれば、私たちの住む太陽系が若かった頃にどのような姿をしていたのかを、鮮明なイメージとして映し出してくれます。しかしこれまでに直接撮影された塵のリングは、太陽に比べてかなり重い恒星にあったり、中心星から遠い距離にあったり、そもそも恒星が生まれた環境が太陽と大きく異なっていたりと、太陽系のカイパーベルトに似ているとは言いがたいものでした。

  今回、国立天文台ハワイ観測所 (すばる望遠鏡) 研究員のセイン・キュリーさんが率いる研究チームは、南米チリにあるジェミニ南望遠鏡に搭載された Gemini Planet Imager (GPI) を使った観測により、若いカイパーベルトにそっくりかもしれない塵のリングを、ケンタウルス座にある HD 115600 という恒星の周りに発見しました。「私たちは、太陽系が『よちよち歩き』だった頃の姿を眺めているのかもしれません」と、キュリーさんは指摘します。

  塵のリングが見つかった HD 115600 は、太陽よりほんの少しだけ重い恒星で、太陽が生まれた環境に似た星団に存在します。発見された塵のリングは、太陽系のカイパーベルトとほぼ同じ距離にあるという点も大きな特徴です。また、研究チームは、観測された塵のリングの中心が恒星の位置から少しずれていることも見つけました。これは、恒星の周りを未知の惑星が回っており、惑星との相互作用でリングに歪みが生じたと考えれば説明がつきます。さらに研究チームは、観測された塵のリングの「色」が、カイパーベルトの主要構成物質である氷やケイ酸塩などの塵で説明しうるということも指摘しています。

  今回の発見はジェミニ南望遠鏡 GPI によってなされたものですが、最先端技術に基づき太陽系外惑星や太陽系外カイパーベルトを見つけ出すための観測装置 SCExAO も、すばる望遠鏡で観測を始めています。キュリーさんは「以前は 50 分以上の露出でも見つけられなかったものが、たった 50 秒で見つけられるようになるのです」とは語ります。「GPI での成功をふまえると、すばる望遠鏡が誇る最新鋭の惑星探査装置 SCExAO も間もなく、カイパーベルトに似た塵のリングや太陽系外惑星をたくさん発見するのではないでしょうか。SCExAO は『第二の地球』発見への足がかりとなるでしょう」とキュリーさんは期待を述べています。

  この研究成果は、米国の天文学誌『アストロフィジカル・ジャーナル・レターズ』に掲載される予定です (Currie et al. 2015, "Direct Imaging and Spectroscopy of a Young Extrasolar Kuiper Belt in the Nearest OB Association", The Astrophysical Journal Letters, in press)。論文のプレプリントはこちらから入手可能です。



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