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大学院生がすばる望遠鏡で観測実習

2014年11月20日

  総合研究大学院大学 (総研大) の大学院生による、すばる望遠鏡を用いた観測実習が2014年11月6日の前半夜に行われました。ハワイ観測所のスタッフのアドバイスも得ながら、赤外線多天体撮像分光装置 MOIRCS を使い、クエーサーの環境を調べる観測に取り組みました。ハワイ観測所の総研大教員がレポートします。


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写真1:雲海の上にあるすばる望遠鏡ドーム。雲海に沈み行く太陽を背に、すばる望遠鏡建物のシャッターが開き始めました。同時に建物の側面や、望遠鏡の床下や背後にある風通し用のベンチレータも開いていきます。観測に影響を与えるような空気のゆらぎをできるだけ抑えるため、内部と外部の気温を短時間で等しくしようとしているのです。普通はこの上には雲が無いのですが、このときは上空にも雲がありました。(クレジット:国立天文台)


  クエーサーのエネルギー源は遠方銀河の中心にある巨大なブラックホールと考えられ、銀河全体の 100 倍以上もの光度を放っているため、宇宙で最も明るい天体現象です。天の川銀河系の中心にもブラックホールがありますが、クエーサーは放射しているエネルギー量が桁違いです。このためクエーサーは遠方にあっても検出できるのです。

  さてそのようなクエーサー生成の手がかりの一つが、クエーサーを含む銀河での星形成です。大規模な星形成があれば、生まれたばかりの星々が自分の周囲や近くにある星間雲の主成分である水素ガスを大量に電離させます。その電離した水素イオンが電子と再結合してもとの中性状態に戻るときに、特徴的なスペクトル線、たとえば Hα と呼ばれる輝線を出します。Hα 輝線はもともと可視光の波長域で出る輝線ですが、今回の対象天体のように赤方偏移 z=2.2 にあると、この輝線が赤外線の波長で観測されるようになります。クエーサー周辺で Hα 輝線を特に多く出している領域の分布を調べるため、ある程度広い視野を持つ近赤外線用の撮像装置として MOIRCS を使いました。

  この観測を行った大学院生たちが所属する総研大は、大学院だけ、しかも国立の研究機関に所属して教育研究を行うことができるユニークな機関です。国立天文台は、この総研大の物理科学研究科天文科学専攻でもあるのです (参考)。総研大のカリキュラムでは、すばる望遠鏡での観測が正式の講義科目として卒業に必要な単位に数えることができます。観測自体もですが、そのための準備や、観測後のデータ整約についても、ハワイ観測所スタッフや、総研大の教員を兼任する国立天文台スタッフが指導に加わります。このような大学院生教育は、研究機関として次世代の研究者養成のために重要な責任を担うものであるため、ハワイ観測所およびそのスタッフが力を入れているのです。

  今年のすばる観測実習には5年生一貫博士課程に入学したばかりの1年生2人と、他の大学で修士課程を修了し3年次に入った院生1人が参加しました。気象条件に注意を払いつつ観測の進行をモニターする係、取得されたばかりのデータをチェックする係など分担し、コンピュータのディスプレイ画面に真剣に見入っていました。何しろ遠方のかすかな赤外線をとらえようというのですから、すぐに画面に画像が出てくるわけではありません。薄雲の往来に悩まされつつも、教員のアドバイスも得て、データの質に注意を払いながら、観測を遂行します。


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写真2:観測の前に望遠鏡や観測に使う装置をじっくり見学 (上)。昼の間にドーム側の寒いところで、ハワイ観測所のスタッフが行う様々な作業についても理解しました。夜は観測管制室で予め準備したファイルを使い、しかしその夜の気象条件と合わせ見て調整をしながら観測 (下)。(クレジット:国立天文台)


  観測がほぼ終わるころには、データの質もほぼ見通しが付いて来て、少し気持ちが落ち着いて来たのでしょう、院生たちは「このような観測もできる総研大、ひいては天文学の研究分野に多くの学生が来て、一緒に研究を推進し続けて行けることを願っています」と述べていました。


参考:総研大における教育研究についてのリンク





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