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すばる望遠鏡、観測までの道 (後編)

2014年4月15日

  前編ではすばる望遠鏡の観測時間を獲得するまでの流れをご紹介しました。後編では、観測時間を獲得した研究チームがどのように観測するのか、その風景をスケッチしてみましょう。

ご案内役:藤原英明 (広報担当サイエンティスト)


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写真1:夕刻のマウナケア山頂には、サンセット鑑賞の観光客で賑わいます。その頃、研究者たちは観測の準備に追われます。(クレジット:国立天文台、撮影:藤原英明)



いざ観測!

  厳しい審査を経てすばる望遠鏡の観測時間を勝ち取った観測者は、観測の際には必ずハワイまで来なければなりません。ハワイと言えば...青い海に白い砂浜...。日本からの最初の到着地であるホノルル空港では、そんなウキウキ気分の観光客を横目に、ハワイ島ヒロ行きの飛行機に乗り換えます。さらにヒロに到着後は観測所が用意した車でそのままマウナケア中腹にある中間宿泊施設「ハレポハク」に連れて行かれます。すでに標高 2700 メートル、スーツケースを運ぶだけで息が切れます。すばる望遠鏡があるマウナケア山頂はさらに高い標高 4200 メートル。観測中に高山病にならないように、観測者はハレポハクで1泊して体を慣らします。同時に翌日の観測に向けて体を夜型にする訳ですが、もともと日本とハワイとの時差がマイナス 19 時間なので、もはや自分がどの時間で生きているのか、訳が分からなくなります。

  いよいよ観測当日。ハレポハクの食堂でボリューム満点の夕食をとり、サポートアストロノマー、そして望遠鏡の操作を担当するオペレーターとともに山頂に向かいます。青い空に白い雲海。まさに観測天文学の「聖地」です。マウナケア山頂は、サンセット鑑賞を目玉とした観光スポットとしても有名ですが、観測者はのんびり夕日を眺める暇もなく、準備に取りかかります。事前に準備してきた命令ファイルに誤りがないか、雲の動きはどうか、観測中のチームの役割分担はちゃんとしているか。そして陽が落ち、空が暗くなると観測開始!観測者、オペレーター、サポートアストロノマーの三人四脚で、観測天体に望遠鏡を向けます。


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写真2:観測中の様子。ディスプレイをにらみながら、着実に観測を進めます。(クレジット:国立天文台)



てるてる坊主と次なる長い戦いの始まり

  何事もなければお菓子でもつまみながら計画通り淡々と観測を進めればいいのですが、まぁ大抵何かあります。撮影してみたら予想より暗かったぞ、とか、湿度が上がったので一旦ドームを閉めまーす、とか...。そんなときこそ観測者の腕の見せ所。その場の状況や観測の優先順位、さらには観測終了までの残り時間を考え、次に何をすべきか、随時判断していきます。これぞ観測の醍醐味でしょう。が、気圧が平地の6割しかなく、脳ミソに十分な酸素が行かないマウナケア山頂では、なかなかキツい。夜が明ける頃にはもうヘトヘトです。

  無事に観測を終えたチームは、取れたデータを手に、清々しい気持ちでそれぞれの研究機関に帰っていきます。帰りももちろんホノルル空港で乗り換えてヒロから直帰。ワイキキビーチはお預けです。そして世界中で自分たちしか持っていない貴重なデータをどう料理し、論文にまとめるのか、次の長い戦いが始まるのです。

  年間 300 夜は十分な観測ができると言われているマウナケア山頂ですが、もちろん曇るときは曇ります。私の場合、10月上旬なのに雪が舞い、それはもう散々な結果だったことも...何がいけなかったのかな...。採択されたのに割り当てられた日が悪天候で観測できなかった提案はどうなるのか?残念ながら特段の救済措置はありません。結局は自身の日頃の行いを悔やみ、そして再びプロポーザルを提出し、審査を経て観測時間を勝ち取らなくてはなりません。自分が欲しいデータを手にするまでの戦いは、まだまだ続くのです。


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写真3:観測室につるされているてるてる坊主の群れ。「晴れろー!」(クレジット:国立天文台)



(おわり。)





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