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史上最遠方の宇宙立体地図が完成、ダークエネルギーの謎に迫る研究が進行中

2013年8月7日

  京都大学、東京大学、オックスフォード大学などの研究者からなる国際研究チームは、すばる望遠鏡を使った「戦略枠プログラム」の一環として、FastSound (ファストサウンド; FMOS Ankoku Sekai Tansa (暗黒世界探査) Subaru Observation Understanding Nature of Dark energy) という遠方銀河サーベイプロジェクトを進めています。広視野を確保できる主焦点に観測装置を設置できるという、すばる望遠鏡の強みを生かしたファイバー多天体分光器 FMOS を用いて、約 30 平方度 (満月およそ 150 個分ほど) の領域で約 100 億光年以上彼方にある 5000 個の銀河までの距離を測定し、宇宙の年齢がまだ 50 億年以下 (現在は 137 億年) という太古の宇宙の立体地図を描き出す計画です。このような宇宙の三次元地図は、50 億光年ぐらいまでの距離ではスローン・デジタルスカイサーベイ (SDSS) などのプロジェクトで精密に観測が行われていますが、100 億光年より向こうではまだ例がなく、FastSound が世界で初めて切り込むものです。

  FastSound は2012年春に開始され、2014年春まで観測が続けられる予定です。今回、全体の4分の1程度の領域で観測された 1100 個あまりの銀河による三次元地図が完成し、一般に公開されました (図1)。天球面方向に6億光年四方、奥行き方向に 20 億光年に渡る領域で描き出された 90 億年前の宇宙の大規模構造は、現在と比べるとまだそれほど発達していませんが、現在の宇宙につながる原始の構造と言えます。


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図1: FastSound によって得られた、宇宙誕生後 47 億年の時代の宇宙大規模構造。天球面上で 2.5 度 × 3度、地球からの共動距離 () で 120~145 億光年 (光路距離で 80~96 億光年) の領域が表示されています。銀河の色は星形成率 (年間あたり、何太陽質量分の星が新たに生成されているか) を示しています。また、銀河の数密度に対応して、背景を青く色づけしています。もしダークマター (暗黒物質) が見えれば、このように見えることでしょう。上部に例示されているのは五つの銀河の画像と赤方偏移 (z) です。下部に示した地球や SDSS 銀河マップとの位置関係をみると、FastSound が非常に遠方、すなわち昔の時代の宇宙三次元地図を描き出したことが分かります。(SDSS は、より近傍の銀河の三次元地図を作成したプロジェクトです。) (クレジット:国立天文台、一部データ提供:CFHT、SDSS)


動画: 図1を動画にして解説したもの。 (クレジット:国立天文台、一部データ提供:CFHT、SDSS)


  実は、FastSound の最終目標は単に宇宙の地図をつくることではありません。現在、宇宙の膨張が加速していることが知られており、現代宇宙論の最大の謎とされています。この加速の原因として、未知のエネルギーである「ダークエネルギー」が関与していることや、重力の基本理論である一般相対性理論が宇宙の大きなスケールで破綻している可能性などが考えられています。FastSound の主要科学目標は、得られた大規模構造の中での銀河の運動を精密に測り、大規模構造の成長速度が一般相対性理論で予言されるものと一致しているかどうかを検証することです。このような宇宙論の精密観測により、宇宙の加速膨張の謎がだんだん明らかになってくると期待されています。

  プロジェクトを率いる東京大学の戸谷友則さんは、「銀河の三次元地図を作ることは現代宇宙論の最も基本的な観測の一つで、日本が主導するものとしては FastSound が初めてと言えます。その FastSound で史上最遠方の領域に挑む意義は大きく、宇宙の加速膨張の謎へのヒントが得られればと考えています。」と今後の意気込みと期待を語っています。


距離に関する注:
  宇宙が膨張しているために、宇宙論ではいくつかの距離の定義があります。光速は常に一定であり、その場その場で光が伝搬してきた距離を合計したものは、光路距離と呼ばれます。(観測している天体の時代から現在までの時間に光速をかけたものです。) 一方、光が昔に伝搬した距離は、宇宙膨張のために現在はより大きくなっています。この効果を考えて、現在の宇宙空間の中での幾何学的な距離を計算したのが共動距離で、光路距離より大きくなります。今回の三次元地図はこの共動距離で描かれています。


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