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太陽に現れた小さな影を追え - マウナケアで観測された金星の太陽面通過

2012年6月19日

  2012年6月5日、今世紀最後の金星の太陽面通過が起こりました。非常に稀な現象にもかかわらず、予測可能なこの現象は、8年、121.3 年、8年、105.5 年の間隔のパターンで繰り返し起こることが知られています。前回は2004年でした。ハワイ島は、今回の金星の太陽面通過の全貌を見ることのできた数少ない場所で、マウナケアの山頂は、晴天率が高いことから太陽面通過を見るのに適した場所と考えられていました。このため金星の太陽面通過は、日本ばかりでなく、すばる望遠鏡の地元ハワイでも社会的、科学的な注目を集めました。


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写真1: すばる望遠鏡の研究者が撮影した金星の太陽面通過の様子。金星の外縁 (左上側) には、金星の大気が輝いて見えています。(クレジット: 国立天文台)


  金星の太陽面通過について、ハワイでは有名な観察の歴史があります: 1874年の金星の太陽面通過時、ハワイ王朝のカラカウア王が、国外の天文学者たちを観測のために招待しました。彼らは当時新しい観測道具であったカメラを持って渡航してきたのです。同じように2012年の金星の太陽面通過についても、世界中から観光客がこの歴史的な現象を目にしようとハワイに集まりました。金星が太陽を通過する様子を安全に観察するために、アマチュアの天文家たちは工夫をこらした太陽望遠鏡とデジタルカメラを使い、観光客たちも小さな手持ちの日食フィルター等を使っていました。少なくとも 100 台もの望遠鏡がマウナケア中腹のオニヅカ・ビジター・センターの周辺に並びました。ビジター・センターの職員やボランティが大勢出動し、駐車場所の整理や交通渋滞の解消のための様々な措置をしていました。すばる望遠鏡でも、その日のために多くの見学依頼が殺到しました。

  金星の太陽面通過は、地球と太陽の距離を計測する方法として重視されてきましたが、現在の観測は地球外惑星との関連でも興味深いものです。ハワイ観測所の太陽系外惑星の研究グループは高速・高解像度カメラを搭載した口径 36 センチメートルの反射望遠鏡を屋外に設置しました。


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写真2: すばる望遠鏡の研究者が口径 36 センチメートルの太陽望遠鏡とデジタルカメラを使って、金星の太陽面通過を観測しています。(クレジット: 国立天文台)


  太陽面通過を好条件で観測できるかどうかは、運か努力、またはその両方によります。そのため観測者たちは不安になりながらも太陽面通過の時間を待ちました。前日は強風のために、事前準備中の精密な望遠鏡がはげしく揺さぶられました。おまけにその夜の天気予報はマウナケアの頂上は霧と雪になるかもしれないと警告していたのです。幸いなことに当日は、強い風が吹き付けていましたが快晴となりました。研究者たちはテントで風除けを作り、ライブ映像を見つめました。そのまわりでは日食フィルターを通して自分の目で太陽面通過を見たり、小さな望遠鏡でスクリーン上に投映した太陽の画像を見ている人もいました。


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写真3: 金星の太陽面通過の観察に特殊な機材は必要ありません。この太陽面通過の画像は小さな野鳥観察に使う望遠鏡と白いボール紙で作られました。(クレジット: 国立天文台)


  太陽面通過が始まる予定時刻までにすべての準備が整いましたが、金星はすぐには見えてきませんでした。観測者たちは記録された画像や望遠鏡の照準を再確認しました。そしてついに、小さな黒い点が太陽の側面に顔を出し、ゆっくりと、太陽面に出てきました。その後、観測者たちは6時間もの間、熱心に観測を続けました。

  写真だけでは、このときの訪問者や、観測者の感激が伝わらないかもしれませんが、何ヶ月にも及ぶ準備、何千キロもの移動、装備や天気の心配・・・・、それらを乗り越えて実際に現象を見ることができた人々の爽快感を想像してみて下さい。次の金星の太陽面通過は2117年と2125年の12月に起こります。あなたはあと 105 年、待つことができますか?




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