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ハワイ観測所長による世界天文年記念講演

2009年12月11日

 ハワイ観測所長、林正彦教授による講演が9月17日と19日にそれぞれワイメアのケック望遠鏡・フアラライ・ラーニング・シアターとヒロのイミロア天文センターにおいて、ハワイ島での世界天文年企画の一環として行われました。

 林所長の講演は、すばる望遠鏡の歴史から始まり、8〜10メートル級の大型望遠鏡の中ですばるが唯一持っているユニークな広視野カメラ、主焦点カメラの紹介へと続きました。すばる望遠鏡で撮像された星・惑星形成領域や銀河等の美しい天体画像の解説も行われました。林所長は星形成領域S106の画像を見せながら、アル・ゴア氏のドキュメンタリー映画「不都合な真実」の中で、この画像が美しい宇宙の代表として使われたことを誇らしげに紹介しました。そして話は宇宙の果てへと続き、2009年9月現在でも世界記録を保持している、すばる望遠鏡が発見した最も遠い銀河が紹介されました。

 講演の最後に林所長と東郷庶務係長による対話が行われました。天文学好きな観測所スタッフ代表としての東郷係長は、「ETが本当に存在する可能性はある?」「ダークエネルギーとは何?」「なぜ天文学には多額の費用が必要なの?」といった質問をしました。林所長は、天文学の使命について聞かれた際に次のようにコメントしています。「天文学には唯一絶対の使命というものはありません。私達は天文学が好きだから天文学の研究をしています。もし、私達天文学者たちが宇宙を調べることがいかに魅力的かを皆さんにお伝えすることができたなら、とても嬉しいことです。」また東郷係長の「すばる望遠鏡は将来、どのような面白い発見をすると思いますか?」との質問に対し、林所長は今後100年間で、ダークマターや太陽系外惑星、ひいては地球外生命についての情報がもっと得られるだろうという見解を示しました。

 二人の対話に興味を持った参加者から、次から次へと質問がよせられました。 「宇宙に終わりはある?」「宇宙が膨張しているのに、なぜ私たち自身は膨張しないの?」「最も古い星が太陽系のすぐ近くにあるのは、どのように説明できる?」「星形成領域って何?また、なぜそこで星が生まれるの?」「月は地球にとても近いのに、なぜ特徴や形成起源についてもっと詳しく知ることができないの?」など、質問は多岐にわたり、更に研究を進めないと答えにくいものも含まれていました。林所長による対話は参加者の興味に火をつけて魅了し、天文学の意義やすばる望遠鏡が果たしている役割について理解してもらうよい機会となりました。

 この講演は、1632年に出版されたガリレオの「天文対話(Dialogue Concerning the Two Chief World System)」を連想させ、ガリレオがはじめて望遠鏡で宇宙の観測を行ってから400周年の世界天文年にふさわしいものとなりました。








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