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3本のレーザービームがマウナケア山頂の夜空を舞う

2009年6月26日

 従来からの天体観測といえば、望遠鏡にとりつけたカメラで星の光を待ち構えるスタイルです。最先端の観測では、レーザービームを上空に照射し、得られる情報で観測精度を高めるレーザーガイド星生成システムを用いることがあります。去る 6 月 9 日の夜半前、マウナケア山頂の夜空には 3 台の大型望遠鏡から照射されたレーザービームが同時に見られました。

 地上で見られる天体の光は、上空の大気がゆらいでいるために乱れた像になっています。大気ゆらぎによる光の乱れ具合を測定し、リアルタイムで像の劣化を補正して本来の光のクオリティに近づける技術が波面補償光学です (詳しいことは、こちら)。波面補償光学装置を利用することで、すばる望遠鏡の分解能は 10 倍も高くなります。

 ただし、波面補償光学装置を用いる際は、観測する天体の近傍に、ゆらぎを測定するための明るい星 (ガイド星) がなければなりません。都合よくガイド星がない場合に、威力を発揮する仕組みがレーザーガイド星生成システムです。レーザービームを観測天体近くの上空約 90 kmの大気中に照射して人工の星を作り、大気のゆらぎを測定するガイド星とします (詳しいことは、こちら)。

 マウナケア山頂にあるすばる望遠鏡、ケック望遠鏡、ジェミニ北望遠鏡の 3 台の大型望遠鏡には、それぞれ波面補償光学装置とレーザーガイド星生成システムが備わっています。すばる望遠鏡では、 2006 年暮れにはじめてレーザービームの照射実験に成功しました (詳しいことは、こちら)。その後は精度を高めるため、さらなる試験観測を続けています。

 3 本のレーザービームが同時に照射された 6 月 9 日は月が明るい夜でしたが、ハワイ観測所の布施哲治さんは「肉眼では見られないほど淡いレーザービームは長時間露光による撮影によってその姿をとらえることができました」と話しています。写真に写るマウナケア山頂の景観が昼間のように見えるのは、月明かりのためです。






図1: (左から) すばる望遠鏡、ケック望遠鏡 【Photo: 小宮山浩子】 (拡大)

図2: (左から) すばる望遠鏡、ケック望遠鏡 (2台)、IRTF、CFHT、ジェミニ北望遠鏡 【Photo: 布施哲治】 (拡大)


図3: (左から) すばる望遠鏡、ケック望遠鏡 (2台)、IRTF、CFHT、ジェミニ北望遠鏡、UH 2.2m 望遠鏡、UKIRT、(倉庫)、1m Ed Telescope 【Photo: Sebastian Egner】 (拡大)


図4: (左から) JCMT、SMA、すばる望遠鏡、ケック望遠鏡 (2台)、IRTF、CFHT、ジェミニ北望遠鏡 【Photo: Sebastian Egner】 (拡大)


図5: (左から) すばる望遠鏡、ケック望遠鏡 (2台)、IRTF、CFHT、ジェミニ北望遠鏡、UH 2.2m 望遠鏡、UKIRT、(倉庫)、1m Ed Telescope 【Photo: Sebastian Egner】 (拡大)


図6: (左から) すばる望遠鏡、ケック望遠鏡 (2台)、IRTF、CFHT、ジェミニ北望遠鏡、UH 2.2m 望遠鏡、UKIRT、(倉庫)、1m Ed Telescope 【Photo: Sebastian Egner】 (拡大)



* IRTF:赤外線望遠鏡 (Infrared Telescope Facility)
* CFHT:カナダ・フランス・ハワイ大学望遠鏡 (Canada-France-Hawai`i Telescope)
* JCMT: ジェームス・クラーク・マックスウェル望遠鏡 (James Clerk Maxell Telescope)
* UKIRT:イギリス赤外線望遠鏡 (United Kingdom Infrared Telescope)
* UH 2.2m 望遠鏡:ハワイ大学口径 2.2m 望遠鏡 (University of Hawai`i 2.2m telescope)
* SMA:スミソニアンサブミリ波アレイ (Smithsonian Submillimeter Array)
* 1m Ed Telescope:ハワイ大学ヒロ教育用望遠鏡 (University of Hawai`i Hilo 1m Educational Telescope)


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