トピックス

すばる望遠鏡を支えるスタッフ(19)

2008年07月28日

前回に引き続き、新しい装置として現在立ち上げをしている、レーザーガイド星を用いた補償光学(Adaptive Optics, AO) システムの開発グループを特集します。今回は、大屋真さん、服部雅之さん、斉藤嘉彦さん、伊藤周さんの4名です。皆さん、装置開発やシステムの立ち上げの経験を持ち、まさに実動部隊として活躍しています (情報は掲載当時のものです)。


>AOサイエンティスト
大屋 真

― 仕事の内容を教えていただけますか?

 レーザーガイド星補償光学装置の開発に携わっています。主に可変形鏡の設計を担当しました。現在は性能の向上を目指すべく、可変形鏡の特性を詳しく調べる測定方法の開発を進めています。また、可変形鏡に星の光を導く光学系の調整方法や機構の制御方法の検討なども行っています。

― すばる望遠鏡で働くようになったきっかけは何ですか?

 ハワイ観測所に来る前は通信総合研究所(現在は独立行政法人情報通信研究機構)で大気ゆらぎの計測やその影響を補正してシャープな画像を撮る方法を研究していました。すばるの補償光学システムは、実時間でこれらの操作を行いシャープな天体画像を撮る装置ですので、その経験が活かせています。また、補償光学は現在のところ近赤外線の波長域使用されているので、大学院時代に赤外線天文学を研究していた経験が役に立っていますね。

― 天文学の研究に興味のある読者に向けてメッセージをお願いします

 どのような仕事でも、答えの解らない問題に出会うことは多いと思います。特に研究開発は、その側面が強い仕事です。その時に自分が主体となって考え、行動して解決する努力が必要です。また、解決策は一通りとは限らないので、広い視野で物事をとらえることも大切だと思います。




AOサイエンティスト
服部 雅之

― 仕事の内容を教えていただけますか?

 すばる望遠鏡AOサイエンティストとして、レーザーガイド星補償光学システムの開発を担当しています。特に、補償光学系からデーターを取り出し大気による入射波面の揺らぎを分析する作業と、それを元に補償光学システムの効果を自動で調整するソフトウェアの開発を担当しています。

― すばる望遠鏡で働くようになったきっかけは何ですか?

 早稲田大学応用物理学科で光学を勉強し、情報通信研究機構の光宇宙通信研究室で光波面制御に関する研究を行いました。その後、光波面つながりということもあってすばるの新補償光学系の開発に加っています。

― 天文学の研究に興味のある読者に向けてメッセージをお願いします

 研究者になろうという人には、他の人と違う考え方もできる機転に加え、その裏づけになる基礎知識が大事になると思います。まず必要なのは好奇心でしょうね。やり遂げるまでには何かと手間と時間のかかる仕事が多いので、あきらめない心の余裕と体力も必須ですね。




AOサイエンティスト
斉藤 嘉彦

― 仕事の内容を教えていただけますか?

 レーザーガイド星補償光学システムの開発のうち、レーザーガイド星の質を保つ方法に試行錯誤の日々を送っています。具体的には、光学系設計や組み立て、装置を制御するソフトウェアの作成が担当です。

― すばる望遠鏡で働くようになったきっかけは何ですか?

 大学院生時代には、FOCASという観測装置の開発に参加していました。その頃はまだ装置開発の手順が分からず右往左往していたので、これからは効率よく開発していきたいという気持ちでAOの開発に参加しています。

― 装置開発の意気込みをお願いします

 すばる望遠鏡の装置開発のような大きな研究プロジェクトは、まさにチームプレイです。そういう部分に大きな意義を見出しながらこの仕事に携わっています。空気が薄いため、頭痛を伴う山頂での作業は大変な時もありますが、いつも前向きな気持ちでとりくんでいます。




AOサイエンティスト
伊藤 周

― 仕事の内容を教えていただけますか?

 私は昨年度までは東京大学大学院天文学専攻の博士課程後期の学生でしたが、現在はAOサイエンティストとして、ハワイ観測所で研究を行っています。主に新しいレーザーガイド星補償光学システムにおける高出力レーザーを伝送する光ファイバーの試験と性能評価やその開発を担当しています。

― すばる望遠鏡で働くようになったきっかけは何ですか?

 大学生の時は、レーザー物理を専攻していました。本屋ですばる望遠鏡のレーザーガイド星補償光学系の記事を偶然見つけ、それに興味を持ったことがきっかけです。これまでの勉強の知識を生かせることや、幼いころからの天文学への憧れもあり、大学院からレーザーガイド星システムの開発に携わるようになりました。

― 装置開発の意気込みをお願いします

 観測装置の開発は、他の研究者の方々と協力しながら、一つ一つの事柄を積み上げて形にしていく作業です。その分、やりがいがあり、楽しい仕事だと思います。マウナケア山頂での作業は空気も薄くしんどいのですが、2006年の10月に初めてすばる望遠鏡でレーザーを夜空に打ち上げたときは震えるような感動を味わうことが出来ました。



「すばる望遠鏡を支えるスタッフ」のリスト



画像等のご利用について

ドキュメント内遷移