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ハワイ島コナで開催された「褐色わい星に関する国際会議」

2002年5月28日

 世界16カ国からおよそ150名の天文学者が一同に集まった「褐色わい星に関する国際会議」が5月20日から24日の5日間、すばる望遠鏡があるハワイ島のコナで開催されました。恒星と巨大ガス惑星の間の特徴を持つ褐色わい星は、質量が小さく、星のように水素をヘリウムに融合することができない天体です。星間宇宙にあるガス雲が重力崩壊して恒星と同じように生まれたのか、惑星のように星の周りにあるガス円盤から誕生したのかについては、はっきりとしたことはわかっていません。ハワイ大学が主催し、ハワイ観測所をはじめとする、マウナケアに天文台をもつ観測所が協賛したこの会議では、褐色わい星について活発な議論が行なわれました。

 質量が小さい褐色わい星は、収縮によるエネルギーをゆっくりと放出しており、赤外線の波長域でぼんやりと輝いています。口径8メートルの主鏡を備え、すぐれた観測地であるマウナケア山頂に設置されたすばる望遠鏡は、星が形成中のガス雲に埋もれていたり、また近くにある明るい恒星の光によって見えにくくなっているような褐色わい星を研究する上で、最適な望遠鏡の一つといえるでしょう。大きな主鏡は、たくさんの光を集め、恒星や褐色わい星の鮮明な画像を得ることを可能にします。さらにすばる望遠鏡の波面補償光学装置 AO は、地球大気による星の像の乱れを打ち消する役割を果たすのです。

 会議では、すばる望遠鏡の近赤外線分光撮像装置 IRCS と AO の組み合わせやコロナグラフ撮像装置 CIAO などで行なわれた褐色わい星の観測に関する研究発表が行なわれました。その中には、国立天文台の田村元秀さんによる、星が形成されている領域にある若い褐色わい星の話や、神戸大学の伊藤洋一さんによる CIAO を用いた恒星の周りを回る褐色わい星の観測に関する発表がありました。また国立天文台ハワイ観測所の林正彦さんは、すばる望遠鏡の次世代 AO システムの可能性と、褐色わい星の研究に向けた AO システムの応用について話を行ないました。

 すばる望遠鏡の観測結果に関連した研究発表は、以下の通りです。

Deep Near-Infrared Surveys and Young Brown Dwarf Populations in Star Forming Regions by Motohide Tamura

Very Low Mass Stellar Populations in Star-Forming Regions: Near-Infrared Luminosity functions and Mass Functions by Yumiko Oasa

Subaru Choronagraphic Search for Companion Brown Dwarfs by Yoichi Itoh

Unified cloudy Models and Spectral Classifications of L and T dwarfs by Takashi Tsuji

Future Prospects of the Subaru Adaptive Optics and Brown Dwarf Research by Masa Hayashi

High Dynamic Range and the Search for Planets by Alan Tokunaga

Near-Infrared Adaptive Optics Spectroscopy of Binary Dwarf HD 130948B and HD 130948C by Miwa Goto

H and K-band Methane Features in and L Dwarf, 2MASS0920+35 by Takashi Nakajima

 国際会議の詳しい情報は、以下でご覧になれます。
http://www2.ifa.hawaii.edu/iau211/

 

 

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