ハワイ観測所の大学サポート

臼田知史 (国立天文台)

2009年3月にすばる小委員会がまとめた提言書「2020年へのすばるの戦略
”天・地・人”」の小規模装置開発に関する箇所に、以下のような記述がある。
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 すばる望遠鏡建設時には搭載するための装置を設計/製作するために当時の
多くの大学院生もかかわり、それが光赤外の装置開発のレベルを上げることに
も繋がった。現在、すばるや共同利用装置が定常的に運用されるようになり、
それらを用いた優れた研究が大学院生によってもなされるようになる一方、
装置開発に携わることへの動機づけが失われつつある。初期の共同利用装置が
徐々に引退していくであろう現在、この機会をもう一度装置開発への機運を
高めるための時期として有効に利用すべきである。
 このためには、大規模な次期共同利用装置の開発とともに、一方では小規模
装置の開発を推奨していくことが重要である。小規模装置は、汎用性には劣る
かもしれないが、他の装置では得られない特徴ある観測データの取得を可能に
するという利点を持つ。また、小規模であるがゆえに各大学が開発を進めること
も可能であり、装置開発についての経験の蓄積や人材育成の場を大きく広げる
ことになる。小規模装置推奨のためには、
(1) かつて存在したすばるR&D のような経費を復活させることにより費用の面
 からサポートすること、
(2) あるレベルを保ちながらも持ち込み条件を緩め装置持ち込みへの敷居を現状
 より下げること、が必要であろう。
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 ハワイ観測所では、観測装置開発R&D経費として、各大学が独自に進める装置
開発を予算的にサポートしてきた。この経費は名古屋大学の佐藤修二教授が中心
になって、予算を配分するだけでなく、進捗状況を各大学に足を運んで確認し、
助言するアフターケアも充実していた。しかし、すばるの予算削減のため、平成
13年度の8000万円、平成14年度の2000万円を最後に、それ以後は定常的な予算
は無い状態である。
 本講演では、大学支援に関する近年の実績を紹介した後で、今後についての
課題と提案内容について紹介し、ユーザーと議論をおこないたい。