観測成果

遠方にある超新星の大量発見で宇宙膨張の謎に迫る

2019年5月29日 (ハワイ現地時間)

  東京大学国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構 (Kavli IPMU) の安田直樹 (やすだ なおき) 教授を中心とする Kavli IPMU、東北大学、甲南大学、国立天文台、東京大学大学院理学系研究科、京都大学の研究者らからなる研究チームは、すばる望遠鏡に搭載された超広視野主焦点カメラ Hyper Suprime-Cam (HSC; ハイパー・シュプリーム・カム) を用いた半年間の観測により、私たちから約 80 億光年以上 (赤方偏移1以上) もの遠方にある超新星 58 個を始め、約 1800 個もの超新星を発見しました (図1)。近傍を含む大量の超新星を発見したことのみならず、遠方超新星を半年間という短期間の観測からこれほどの数発見できたことは、大口径のすばる望遠鏡の集光力と高解像度で広視野という HSC の特長を合わせた観測の強みが存分に活かされた成果と言えます。


図1

図1: 今回発見された超新星の例 (3枚1組の写真が一つの超新星の変化を示します)。左から順に爆発前、爆発後、超新星の様子を表します。(クレジット:N. Yasuda et al.)
また、今回発見された全ての超新星の画像についてはこちらからご覧いただけます。 (協力:国立天文台 小池美知太郎)



  超新星爆発は星が一生の最期に起こす大爆発で、宇宙進化の原動力であることが知られています。太陽の 10 億倍以上という銀河全体に匹敵する明るさで光り輝き、その後一カ月から半年ほどで暗くなってしまいます。特に、Ia (いちえい) 型と呼ばれる超新星はその絶対的な明るさがほぼ一定であるため、見かけの明るさの明暗により超新星までの距離を測定することが可能です。この性質を利用して Ia 型超新星の観測によって宇宙の加速膨張が1998年発見され、この貢献により、米カリフォルニア大学バークレー校の Saul Perlmutter (ソール・パールムッター)、オーストラリア国立大学の Brian Schmidt (ブライアン・シュミット)、米ジョンズ・ホプキンス大学の Adam Riess (アダム・リース) の3氏に2011年ノーベル物理学賞が贈られています。

  また、近年では Ia 型超新星よりも 5-10 倍も明るい超高輝度超新星と呼ばれる特殊な超新星が次々と発見されています。超高輝度超新星は、その明るさのために非常に遠方のものまで観測できることから、宇宙初期にできた大質量星の性質を知るのに重要な手がかりになるとされています。

  これらの超新星を効率よく発見し、その明るさの変化を測定するためには、空のできるだけ広い領域を長期間にわたって繰り返し観測して、新しく現れる天体を発見することが必要です。超広視野主焦点カメラ Hyper Suprime-Cam (HSC) は、すばる望遠鏡の大集光力と高解像度を活かして遠くの非常に暗い天体まで観測できることに加えて、満月9個分に相当する広い視野を一度に観測することができます。現在、この HSC を使った大規模なサーベイ観測である大規模戦略枠観測プログラム (HSC-SSP) が国立天文台、Kavli IPMU、台湾中央研究院天文及天文物理研究所 (ASIAA)、米国プリンストン大学をはじめとする研究機関の研究者らによって共同で行われています。

  今回、Kavli IPMU、東北大学、甲南大学、国立天文台、東京大学大学院理学系研究科、京都大学の研究者らを中心とする研究グループは、この大規模サーベイ観測の一部として、2016年11月から2017年4月の半年間にわたり、ろくぶんぎ座方向の COSMOS 領域と呼ばれる天域約 7.5 平方度 (HSC の視野5つ分) を繰り返し観測し、約 1800 個の超新星を発見しました (図2)。超新星の検出には機械学習などの手法が用いられています。


図2

図2: 今回発見された超新星 (赤点) の分布。青い丸が HSC の視野。背景はスローン・デジタル・スカイ・サーベイ (SDSS) の画像。領域の大きさの比較のために満月の写真を右上に表示しています。(クレジット:Kavli IPMU, Partial data supplied by: SDSS)


  観測は青い波長 (473 ナノメートル) から赤い波長 (1005 ナノメートル) まで5つのフィルターで行われ、得られた多色の光度曲線をもとに超新星のタイプを判別したところ、うち約 400 個が Ia 型超新星と考えられることが分かりました。このうち 129 個については正確な赤方偏移が知られており、58 個は赤方偏移が1以上、つまり約80億光年より遠くにあることが分かりました。これまで、これほど遠くの Ia 型超新星は主にハッブル宇宙望遠鏡が過去 10 年間に実行した観測で発見された 50 個弱が知られているのみです。つまり、HSC を用いた半年間の観測で、ハッブル宇宙望遠鏡が 10 年間で発見した遠方超新星の数を超える数の超新星が、今回発見されたことを意味します。また、赤方偏移が2前後より大きい (約 100 億光年程度よりも遠方にある) 超高輝度超新星も5個発見され、この時代にどの程度発生するかの出現頻度が測定出来ました。

  研究チームは今後、発見されたこれら遠方の Ia 型超新星のデータを使って、より正確な宇宙加速膨張の値を導き出し、ダークエネルギーが時間とともにどのように変化しているかを調べていく予定です。

  本成果について、研究の中心となった安田直樹教授は「すばる望遠鏡の Hyper Suprime-Cam はダークマターの3次元分布の観測、原始ブラックホールの観測などで大きな成果をあげていますが、今回、ハッブル宇宙望遠鏡が牽引してきた遠方超新星の探査でも、これまでの観測装置を凌駕する非常に高い能力を有していることが確認されました。このような観測機会を与えて下さった HSC-SSP の共同研究者のみなさんに感謝したいと思います。今回得られたデータによって明らかにされる宇宙の姿を見るのが楽しみです」と述べています。


  本成果は、日本天文学会の発行する『Publications of the Astronomical Society of Japan (欧文研究報告)』のオンライン版に2019年5月30日付で掲載されました (Yasuda et al., "The Hyper Suprime-Cam SSP Transient Survey in COSMOS: Overview")。プレプリントはこちらから閲覧可能です。また本研究は、科学研究費補助金 基盤研究 (A) (15H02075、代表:田中雅臣)、科学研究費補助金 新学術領域研究「なぜ宇宙は加速するのか?」公募研究 (H1804345、代表:安田直樹)、科学技術振興機構 CREST (JPMHCR1414、代表:吉田直紀) の援助を受けています。


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