観測成果

すばる望遠鏡が写し出す、惑星が隠れた若い惑星系の姿

2019年5月13日 (ハワイ現地時間)

  すばる望遠鏡に搭載された新しい観測装置が、若かりし頃の太陽系に似ていると考えられる惑星系を持つ恒星 LkCa 15 の原始惑星系円盤を、これまでで最も鮮明に写し出すことに成功しました。この恒星は木星よりも質量が大きい形成途中の3つの惑星候補を持つと考えられていました。今回、すばる望遠鏡に搭載された極限補償光学装置 SCExAO と面分光装置 CHARIS の組み合わせにより、これまで惑星から発せられていると考えられてきた光のほとんどが、実は原始惑星系円盤からのものだったことがわかりました。また、円盤の中に隠れている惑星は、従来考えられてきたものよりもさらに質量が小さい可能性があることが判明しました。


図1

図1: 2017年9月7日に SCExAO/CHARIS で捉えた若い太陽型の恒星 LkCa 15 の画像 (左図)。2つの弧のような形状は、LkCa 15 の原始惑星系円盤が2つの構造を持っていることを示しています。中央図は、理論モデルから予想される LkCa 15 の円盤からの散乱光。右図は3つの惑星があった場合に予想されるイメージ。いずれの図も北が上で、東が左方向に対応。LkCa 15 の主星は地球から約 500 光年離れています。今回のデータでは中心星の近傍約9天文単位 (左図点線で表した円の半径:土星軌道に相当) まで検出できています。最も内側の円盤は、30 天文単位 (冥王星軌道) に相当します。SCExAO/CHARIS のデータを解析すると、LkCa15の周囲からの届く光の大部分は、惑星からではなく、円盤からの散乱光によるものであることがわかりました。(クレジット:国立天文台/SCExAO チーム)



  「この『若い太陽系』とも言える LkCa 15 の惑星系には、我々の太陽系に似た部分がこれまで考えられてきたよりも多いことを、SCExAO の鮮明な画像が示しています」と、論文主著者である Thayne Currie さん (NASA エイムズ研究センターおよび国立天文台ハワイ観測所) は語ります。

  若い太陽型星である LkCa 15 は、惑星の材料となるガスや塵でつくられた原始惑星系円盤を持ちます。これまでの研究から、この円盤には大きな隙間があることが知られていました。そしてこの隙間は、塵が集まった「若い惑星」が円盤の中で形成されていることを物語っています。

  しかし、この地球から 500 光年以上離れた距離にある LkCa 15 の周りを回る惑星を、太陽系と同じようなスケールで地上から直接捉えるには、地球の大気ゆらぎの影響を補正する補償光学を持ったすばる望遠鏡のような大望遠鏡であっても非常にチャレンジングなことです。これまで、開口マスキング干渉法と呼ばれる最先端技術を基にした観測結果から、3つの惑星候補天体が土星から海王星の軌道を回っていると考えられており、これが円盤内にある太陽系外惑星として初めて認識されたものでした。しかしこの観測方法では、塵の円盤による散乱光に比べ、惑星からの光がどれくらい来ているのかを実際に判断するのは特に難しいという点がありました。

  すばる望遠鏡に搭載された SCExAO は、一般的な補償光学装置よりも高速で高感度なカメラと 2000 素子もの可変形鏡の組み合わせを用いることで、地球の大気ゆらぎの影響をより高度に補正し、そのままではぼやけて見えてしまう星像をより鮮明に映し出すことが可能です。さらに CHARIS と呼ばれる面分光装置に光を送ることで、天体から来る光の「色」の場所ごとの違いを高い解像度で直接見分けることができるため、惑星の大気成分などを詳しく調べることも可能です。

  「SCExAO/CHARIS は、我々の太陽系スケールに似た惑星を今まで以上に直接探査することができ、その性質までも明らかにすることが可能です」と、SCExAO 装置開発責任者である Olivier Guyon さん (国立天文台ハワイ観測所) は話します。

  今回、SCExAO/CHARIS のデータは、LkCa 15 の周囲から来る光の大部分が、広がった弧のように見える円盤部分で発せられたものであることを示し、以前に示唆されていた惑星候補と同じ明るさを持っていることもわかりました。ケック望遠鏡を使った追観測からも、この円盤の弧の形状が時間とともに変化していないことが確認できました。つまり、これまで軌道を回っている惑星からのシグナルと思われていた光は、円盤のような動きのない構造とよく一致することがわかったのです。

  「LkCa 15 の惑星系はかなり複雑です。今回の観測以前に取得された開口マスキング干渉法による撮像データにより、私達も3つの木星型惑星が存在するだろうと考えていました。しかし、SCExAO/CHARIS によるデータは、これまでのシグナルは円盤本体から来ているものであることを示しており、惑星自身は、より暗く、円盤内に隠されている可能性が高いことを示すものです。我々は今後もその隠れている惑星探査に挑戦していきます」と Currie さんは語っています。

  LkCa 15 の円盤と、その円盤に隠された惑星からの光をはっきりと区別して見分けるのはかなり難しい挑戦になるでしょう。しかし、技術的には確実に前進しており、SCExAO は今後も改良を継続していく予定です。近い将来には、LkCa 15 の円盤に存在する土星軌道近くの木星型惑星を捉えることができるかもしれません。また、さらにその先の未来には、建設予定の 30 メートル望遠鏡 TMT に SCExAO で成功した技術を搭載することで、より低質量で火星軌道近くを回る暗い惑星をも撮像できるようになるでしょう。

  「SCExAO のような最先端の撮像装置がもたらす観測結果は、私達の太陽系が辿ってきた歴史が普遍的なものであるのか、それとも特別なものなのか、といった惑星系の起源と進化をよりよく理解するための糸口になります」と、論文共著者である田村元秀さん (自然科学研究機構アストロバイオロジーセンター所長・教授) は話しています。



  本研究成果は、米国の天体物理学誌『アストロフィジカル・ジャーナル・レターズ』に受理されました (Currie et al., "NO CLEAR, DIRECT EVIDENCE FOR MULTIPLE PROTOPLANETS ORBITING LKCA 15: LKCA 15 bcd ARE LIKELY INNER DISK SIGNALS")。プレプリントはこちらから閲覧可能です。また本研究は、NASA、ケック財団、チリ国立科学研究開発基金、および日本学術振興会科学研究費補助金 JP18H05442、JP15H02063 による援助を受けています。





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