観測成果

新星爆発は煤だらけ?

2017年1月15日 (ハワイ現地時間)

この記事は京都産業大学からのプレスリリースに基づいています。


  新星 (詳しくは「古典新星」) は、突如、星が輝きだすように見える現象ですが、その正体は「白色矮星と普通の恒星の連星系で起きる大爆発」です。今回、京都産業大学神山天文台などの研究チームは、2012年に「へびつかい座」に発見された V2676 Oph という新星において、爆発で飛び散ったガス中に大量の煤 (すす) が発生していたことを、すばる望遠鏡の観測から世界で初めて明らかにしました。


図1

図1: V2676 Oph の中間赤外線スペクトル (上が2013年6月20日、下が2014年5月17日 (世界時) に観測されたもの)。宇宙空間にある 300 K 程度の物体から中間赤外線が放射されており、その強度の波長分布 (スペクトル) を調べることで、どのような物質が存在しているのかを調べることができます。波長 11.4 マイクロメートルに見られるピークは「赤外未同定バンド」と呼ばれるもので、その正体ははっきり分かっていませんが、おそらく炭素をたくさん含む巨大分子ではないかと言われています。(クレジット:京都産業大学)



  年間、数個の新星が発見されています。新星爆発によって飛び散ったガスから微小な粒子 (ダスト) が大量に作られることがあり、太陽系や他の星・惑星系の材料の供給源としても重要な天体です。

  V2676 Oph は、2012年3月にアマチュア天文家の西村栄男さんによって発見された新星ですが、明るさが非常にゆっくりと変化する特殊なタイプの新星であることが当初より分かっていました。その新星を神山天文台で集中的に観測した京都産業大学大学院理学研究科の学生たちによって、炭素原子が2個くっついた C2 分子が、新星において世界で初めて発見されています。これは、この新星のガスに炭素がたくさん含まれていることを暗示していました。

  そこで、同大学院理学研究科・博士前期課程2年の長島さん (当時) は、すばる望遠鏡に搭載された中間赤外線カメラ COMICS を使って V2676 Oph を2013年に観測し、新星から放射されている中間赤外線のスペクトルを得たのです。その後、2014年にも同じ新星を観測し、2年間に渡る観測結果を神山天文台台長の河北秀世さんをはじめとする研究チームが詳細に研究したところ、非常に大量の煤、つまり炭素から成る微粒子が生成されていたことが明らかになりました (図1)。これは V2676 Oph が炭素を大量に含んでいたことの証拠です。

  では、なぜ炭素が大量に含まれていたのでしょう?研究チームでは、新星爆発の原因となる白色矮星が、炭素および酸素に富んだタイプの白色矮星 (CO白色矮星) であったからだと考えています。新星爆発が起きる時、白色矮星表面につもったガスは、もともと白色矮星にあったガスと強く混じり合い、そこに含まれていた大量の炭素や酸素といった元素を含んで爆発したのだと考えられます。

  また研究チームは、炭素の微粒子の他にケイ酸塩の微粒子も含まれていたことを突止めています。そして、炭素を含む巨大分子と思われる物質の存在も明らかにしました。おそらく、「C2 分子→炭素を含む巨大分子→炭素の微粒子」という具合に、次第に大きなサイズの物質が形成された結果だと考えられます。このような一連のサイズ成長の痕跡が観測されたのは、今回の V2676 Oph が初めてです。観測を主導した長島さんは、「自分が携わった観測が論文になり、嬉しく思います」と語っています。


  本研究の成果は、米国天文学会の天文学誌『アストロノミカル・ジャーナル』に掲載される予定です (Kawakita at al. 2017, The Astronomical Journal, "Mid-infrared Spectroscopic Observations of the Dust-forming Classical Nova V2676 Oph")。





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