観測成果

遠方宇宙

突然、星を作らなくなった銀河の発見 ―100 億年前、銀河に何が起こったのか?―

2015年9月8日 (ハワイ現地時間)
最終更新日:2020年3月17日

この記事は愛媛大学・日本天文学会のプレスリリースを元に掲載したものです。

私たちの住む天の川銀河のような銀河は、138 億年前の宇宙誕生後数億年が経過した頃に誕生しました。そして、宇宙の年齢が 20 から 30 億歳の頃に、銀河では爆発的に星が生まれ、その後は星を作らずに静かに進化してきたことがわかっています。では、なぜ星の生成が止まったのか?また、星生成を止めたばかりの銀河はどこにあるのか?

愛媛大学の研究者を中心とする研究チームはこれらの答えを求めて、100 億光年彼方の宇宙で、これまでにない大規模な輝線銀河の探査を行いました。そして、ついに「まさに星の生成が止まりつつある」銀河を発見することができました。星生成が止まるタイムスケールを評価してみると、わずか数千万年であることがわかりました。銀河の年齢は約 130 億歳ですから、それに比べたら星生成の停止は一瞬の出来事といってもよいでしょう。今回の発見で、銀河の初期進化の全貌がようやく見えてきました。すばる望遠鏡による広域輝線銀河探査の大きな成果です。

突然、星を作らなくなった銀河の発見 ―100 億年前、銀河に何が起こったのか?― 図

図1: 研究チームが発見した「星生成を止めつつある銀河」であるマエストロ銀河 (MAssive Extremely STrong Lyman α Object) のカラー合成画の例。青は中帯域フィルターで観測された電離ガス (ライマンα輝線)、緑は若い星 (R バンド、波長 0.62 マイクロメートル)、 赤は古い星 (Ks バンド、波長 2.2 マイクロメートル) からの光を示します。各画像はマエストロ銀河を中心に、一辺 15 秒角 × 15 秒角の範囲を表示。 図中の横棒は1万光年に対応。上が北、右が西に対応。(クレジット:愛媛大学)

この研究成果は、アメリカ天文学会の天体物理学誌『アストロフィジカル・ジャーナル・レターズ』に2015年8月5日付で掲載されました (Taniguchi et al. 2015, ApJ Letters, Vol. 809, L7, "Discovery of Massive, Mostly Star Formation Quenched Galaxies with Extremely Large Lyα Equivalent Widths at z ~ 3")。また、この研究成果は、科学研究費補助金 (15340059, 17253001, 19340046, 23244031, 23654068, 25707010) による助成を受けて行われたものです。

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