観測成果

銀河に流れ込む「星の小川」 ~ すばる望遠鏡が写した銀河合体の現場

2012年2月13日

  デイビッド・マルティネス-デルガドさん (ドイツ・マックスプランク天文学研究所) を中心とする国際研究チームは、すばる望遠鏡を使った観測から、銀河に流れ込む「星の小川」の撮影に成功しました。この「星の小川」、実は NGC 4449 という矮小銀河がそばにいた別の矮小銀河をのみ込んでいる様子で、銀河同士が合体している現場です。広い視野と高い解像度を持つすばる望遠鏡は、のみ込まれている銀河の星の一つ一つをはっきりと分離して写し出しました (画像)。


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画像: すばる望遠鏡に搭載された Suprime-Cam が捉えた矮小銀河 NGC 4449 (左下) とのみ込まれつつあるさらに小さな銀河 (右上)。NGC 4449 中心部の青い輝きは活発な星生成活動を、外縁部やのみ込まれつつある銀河に見られる赤い光は年老いた赤色巨星の存在を示しています。(画像合成:ジェイ・ガバニー氏)



  私たちから 1250 万光年の距離にある矮小銀河 NGC 4449 に流れ込むこの「星の小川」は、もともとは過去にパロマー天文台で撮影された写真乾板のデータ中に、不思議な薄いシミとしてロシアの天文学者によって見つかりました。その後マルティネス-デルガドさんは、アマチュア天体写真家であるジェイ・ガバニーさんとともに口径 50cm の望遠鏡でより高品質の画像を撮影し、NGC 4449 周囲に確かに淡い構造があることを確認しました。そしてついに、アーロン・ロマノフスキーさん (米国・カリフォルニア大学天文台) とジェイコブ・アーノルドさん (カリフォルニア大学サンタクルーズ校) が、すばる望遠鏡に搭載された主焦点カメラ Suprime-Cam を使って観測を行い、NGC 4449 に流れ込む「星の小川」の存在を明らかにしました。矮小銀河 NGC 4449 にさらに小さな矮小銀河がのみ込まれ、合体している瞬間です。

  現代の宇宙理論では、大きな銀河は小さな銀河同士が合体することで作られるとされています。これまで、大きな銀河が絡む合体の様子は数多く観測されてきましたが、矮小銀河同士の合体を直接観測することは困難でした。すばる望遠鏡で観測を行ったロマノフスキーさんは、「矮小銀河がさらに小さな銀河をのみ込む様子を捉えたこの美しい画像を、ようやく手に入れることができました。のみ込まれている銀河が引き裂かれつつある様子が見てとれます。引き裂かれた銀河の星々は、いずれ親銀河の周囲にハロー構造として残るのです」と語ります。

  さらにロマノフスキーさんは語ります。「NGC 4449 は高い星生成率を示すことで有名な銀河ですが、どうやら私たちはその理由をつかんだようです。落ち込んできた銀河との重力的な相互作用が親銀河の中のガスを乱し、それが原因となって星生成が始まったのかもしれません。」NGC 4449 における銀河同士の合体は、矮小銀河におけるハロー構造の生い立ちだけではなく、爆発的な星生成の起源についてもヒントを与えてくれるようです。


  この研究成果は、米国のアストロフィジカル・ジャーナル・レター誌に出版される予定です。


研究論文の出典:
Martinez-Delgado et al. 2012, Astrophysical Journal Letters (in press), "Dwarfs gobbling dwarfs: A stellar tidal stream around NGC 4449 and hierarchical galaxy formation on small scales"




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