観測成果

すばる望遠鏡、探査機の月面衝突の観測に参加

2009年10月9日


観測中のコンピュータ画面

 東京大学、宇宙航空研究開発機構、国立天文台などの研究者からなる観測チームは、水の存在確認を目的とするアメリカ航空宇宙局 (NASA) の エルクロス・ミッションの月面衝突について、すばる望遠鏡による観測を実施しました。NASA によりますと、月面への衝突は計画通りに起こった模様です。衝突直後の簡易データ解析の結果、月面からの放出物の観測に成功したかどうかは不明なため、観測チームは詳細なデータ解析を続行しています。

 エルクロス (LCROSS: Lunar CRater Observing and Sensing Satellite) 探査機は、月を周回中の LRO (Lunar Reconnaissance Orbiter) 探査機と共に、アトラスロケットによって2009年6月18日に打ち上げられました。エルクロス・ミッションでは、内部まで日光の当たらない月の南極域にあるカベウス・クレーター (直径98km) に探査機を月まで運んだ第 2 段ロケットおよびエルクロス探査機を順々に衝突させます。その衝撃による放出物中に水の成分が含まれるかどうか、エルクロス探査機や LRO 探査機をはじめ、地上の望遠鏡を用いた観測を行い、将来の有人探査に有益な月面中の水の存在を確認することが最終的な目的です。


衝突の想像図 (NASA 提供)

 NASA の計画通りに、ハワイ時間2009年10月9日午前1:31 (日本時間同日午後8:31) 、第 2 段ロケットがカベウス・クレーターに衝突、およそ 4 分後には エルクロス探査機が衝突しました。マウナケア山頂域にある望遠鏡のうち、すばる望遠鏡、ケック望遠鏡、ジェミニ北望遠鏡、カナダ・フランス・ハワイ大学望遠鏡、NASA の赤外線望遠鏡 IRTF、カルテック・サブミリ波天文台が月面衝突の観測に参加しています。

 研究チームは、水成分の検出を目的とするため、すばる望遠鏡の近赤外線分光撮像装置 IRCS を用いた近赤外線波長域の分光観測を実施しました。衝突後に行った約 2 時間の簡易なデータ解析の結果、月面衝突による放出物の観測に成功しているかどうかは、さらなるデータ処理が必要なことがわかりました。研究チームはデータ解析を続け、水の成分が検出されれば、クレーター内に存在する水の総量などを詳しく調べる予定です。



すばる望遠鏡の観測室内にて






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