観測成果

すばる望遠鏡、銀河合体の謎を解く

2009年6月9日

 近傍の宇宙には複数(2個以上)の銀河が合体したと考えられる天体があり、そのいくつかは赤外線で非常に明るく輝くウルトラ赤外線銀河として注目を集めていました。これらの銀河では爆発的な星生成現象が起こっており、その明るさは天の川銀河の100倍以上もあります。なぜ、このような激しい星生成が起こっているのか、その物理的なメカニズムは不明のままでした。

 その解明には、ウルトラ赤外線銀河がどのような銀河の合体で誕生したのかを見極める必要があります。ところが、合体が進行するにつれてその痕跡は見えにくくなるので、どのような合体が起こったかを調べるのは、大変難しい状況が続いていました。

 今回、私たちは幾つかの興味深い合体銀河を口径8.2mのすばる望遠鏡(国立天文台ハワイ観測所、ハワイ州ハワイ島マウナケア山の山頂 [標高4200m] に設置されている世界最高性能の大型光学赤外線望遠鏡)の広視野主焦点カメラで撮影しました。その結果、今まで見つかっていなかった、微かな合体の痕跡を初めて捉えることに成功しました。

 新たに見つかった合体の痕跡は、これまで知られていたものの倍以上の拡がりを持っています(図1)。このような痕跡が残るためには、合体する銀河の回転と合体の軌道が同期している、順行合体(図2)が起こったと考えられます。

今回の新たな発見で、ウルトラ赤外線銀河は複数の銀河の順行合体で形成された可能性が高いことがわかりました。順行合体の場合は、効率よく星生成の元になるガスを合体銀河の中心領域に運ぶことができます。そのため、激しい星生成が起こり、周りにあるダスト(塵粒子)を温めて、赤外線を大量に放射するのでウルトラ赤外線銀河として観測されることになります。

 今回の成果は、すばる望遠鏡の非常に優れた撮像能力のおかげで得られました。すばる望遠鏡が捉えた非常に微かな合体銀河の痕跡で、ウルトラ赤外線銀河の謎が一つ解かれたことになります。

 研究で使用されたデータはすばる望遠鏡の共同利用観測、S03B-239 “SuprimeCam Imaging of the HST COSMOS 2-Degree ACS Survey Deep Field (代表:谷口義明)”で取得されたものです。

 本成果は、米国カリフォルニア州パサデナで開催される第214回アメリカ天文学会において、すばる望遠鏡の研究成果が記者会見講演として選ばれました。


 発表者は、幸田仁 (ストーニー・ブルーク大学)、Nick Scoville (カリフォルニア工科大学)、谷口義明 (愛媛大学宇宙進化研究センター) です。






図1: 左はパロマー天文台の口径5mのヘール望遠鏡で撮影されたArp220の可視光写真 (ネガ表示) (出典:H. C. Arp, 1966, The Astrophysical Journal, Suppl. 14, 1A)。右は私たちがすばる望遠鏡で撮影した可視光写真。パロマー天文台の写真では見えていない微かな合体の痕跡が銀河を取り巻くように見えています。

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図2: 銀河の合体のコンピュータ・シミュレーション (出典: A. Toomre & J. Toomre, 1973, The Astrophysical Journal, 178, 623)。上が順行合体の場合で、合体する銀河の回転と軌道運動の方向が揃っています。下は逆行合体で、合体する銀河の回転と軌道運動の方向が逆になっています。両者を比較すると、順行合体の方が、合体の痕跡が大きくなることがわかります。

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図3: すばる望遠鏡で撮影されたArp220 (擬似カラー表示)

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図4: すばる望遠鏡で撮影されたアンテナ銀河。左下の図は痕跡の一部のクローズアップで、この銀河の場合はこのクローズアップに示された部分が新たに発見されたものです。 (擬似カラー表示)

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図5: すばる望遠鏡で撮影されたマルカリアン231。左上に大きく拡がる構造が、今回の観測で新たに検出されました。 (擬似カラー表示)

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