観測成果

123 億光年彼方のモンスター銀河を発見!
遠方宇宙で見つかった「星々の生成工場」

2008年7月10日

この記事は愛媛大学 宇宙進化研究センターのプレスリリースを転載したものです。
(転載元: http://cosmos.phys.sci.ehime-u.ac.jp/Cosmos/PR080711/)


【概要】

  カリフォルニア工科大学、愛媛大学などの国際共同研究チーム (COSMOS プロジェクトチーム) は、(しし座近くの) ろくぶんぎ座の天域で、123 億光年彼方のモンスター銀河を発見しました。

  この銀河は私たちの住んでいる天の川銀河に比べて数百倍もの勢いで星を作っています。宇宙が誕生してまだ 14 億年しか経っていない頃に、 このような銀河が発見されるのは稀です。

  これまで、最も遠いモンスター銀河 (注1) のまでの距離は約 110 億光年だったので、今回発見されたものは最も遠いモンスター銀河と認定されました。


(注1) モンスター銀河とは普通の銀河の数百倍以上の勢いで星を作っている巨大銀河。遠方の宇宙にあるモンスター銀河は、近傍の宇宙で観測される巨大楕円銀河 に進化すると考えられている。




  以下の説明文はアメリカ航空宇宙局/スピッツァー科学センターによるプレスリリースに基づいて作成したものです。




  地球から遠く離れた宇宙の彼方に、1年間あたり 4000 個という驚くべき勢いで星々を生み出している「星々の生成工場」とも言える 銀河が天文学者たちによって発見されました。

  NASA のスピッツァー宇宙望遠鏡を含む複数の望遠鏡を駆使する事でもたらされたこの発見は、現在広く信じられている銀河形成理論に 対して一石を投じるものです。階層的構造形成モデルと呼ばれるこの銀河形成理論によれば、銀河は小さな銀河がいくつも合体しながら 長い時間をかけて質量成長を遂げると考えられています。このアイデアに従えば、今回発見されたように1つの銀河の中でこれほどの 大規模な爆発的星形成が起きるとは考えにくいからです。

「この銀河は、いずれ自らの一部となる星を一気に作っているという、いわば『ベビーブーム』の最中にいるのでしょう」と カリフォルニア工科大学スピッツァー科学センターのピーター・ケイペック博士は述べています。

  このベビーブーム銀河は爆発的星形成 (スターバースト) 銀河と呼ばれる種類に属するものだと考えられますが、遠方宇宙にあるこの種の 銀河としては記録的に明るいものです。

  この銀河の発見とその性質の調査はいろいろな波長帯で、優れた望遠鏡を駆使して行われました。最初にこの銀河を検出したのは NASA の ハッブル宇宙望遠鏡とハワイのマウナケア山頂にある日本のすばる望遠鏡でしたが、非常に暗い銀河の一つでしかありませんでした。 ところが、スピッツァー宇宙望とジェームス・クラーク・マックスウェル望遠鏡 (すばると同じマウナケア山頂にある望遠鏡) を 使ってこの天体を赤外線とサブミリ波で観測してみると、この銀河が極めて明るいということが分かりました (図1)。

  これらの性質は、この銀河が大量の若い星を含んでいるとすれば説明がつきます。星々が生まれる時には大量の紫外線とダスト (塵粒子) が作られます。このダストは紫外線を吸収し、まるで炎天下に駐車してある自動車のように暖められます。ダストは蓄えたエネルギーを 赤外線とサブミリ波帯で放射するので、スピッツァー宇宙望遠鏡とジェームス・クラーク・マックスウェル望遠鏡で見ると猛烈に明るく 観測されたのです。

  この珍しい現象についてさらに詳しく調べるため、ケイペック博士らはいくつかの望遠鏡を使って調査を続けました。この銀河までの 精確な距離を測定するためにケック望遠鏡を用いた可視光観測を行い、この天体が地球から 123 億光年も彼方にある事を突き止めました。宇宙の年齢がおよそ 137 億年と見積もられているので、この距離は私たちが宇宙誕生からほんの 14 億年後の様子を目にしている事を意味します。

  ケイペック氏は次のように述べています。「もし宇宙が今ちょうど人間で定年にあたる年齢だとすると、私たちが目撃している現場は 宇宙がまだ6歳の子供の頃に相当します。」

  この天体はニューメキシコ州の超大型電波干渉計によって電波でも観測されています。スピッツァー望遠鏡とジェームス・クラーク・ マックスウェル望遠鏡での観測データと組み合わせる事で、この銀河において1年間あたり 1000 個から 4000 個の星々が生成されている事が 分かりました。この勢いで星を作り続けると、宇宙の歴史から見ると一瞬ともいえるわずか5千万年の間で、現在の宇宙における最も 大きな銀河に成長してしまうでしょう。

  このような勢いで星を作る銀河は近傍宇宙でも観測されていますが、遠方宇宙では稀です。今まで見つかっていた最も遠いこの種の銀河の 距離は約 110 億光年彼方でした (宇宙が約 27 億歳だった頃)。今回発見されたベビーブーム銀河は一挙に 13 億光年も記録を更新したことになります。

「私たちはこれまで、このように星を生成している銀河をティーンエイジだった頃の宇宙でしか目撃していませんでしたが、今回の発見 では宇宙がほんの子供だった頃の星形成活動を目撃したのです。」とケイペック氏は言っています。「問題は、巨大銀河の形成がこのベビーブーム銀河のように初期の宇宙で激しく起きたのか、それとも今回発見 されたベビーブーム銀河 が例外的なものなのか、という点です。」

  なお参考までに、私たちが属する天の川銀河は現在も1年間あたり 10 個の割合で星形成を続けていて、宇宙がティーンエイジだった頃 (およそ 36 億歳だった頃) に星形成を開始したと考えられています。

「今回見つかった銀河で起きている信じられないほどの星形成活動は、私たちが初めて巨大楕円銀河誕生の場面を目撃したのかもしれない」と、本研究の共同研究者であり宇宙進化サーベイ (COSMOS) の研究代表者でもある ニック・スコヴィル氏は述べています。この COSMOS 計画とは、地球から見てある方角にある遠方宇宙を電磁波のあらゆる波長帯で調べ尽くそうという大規模な探査観測です。

「この銀河の発見とその性質の調査を素早く行う事ができたのは、COSMOS 計画の様々な観測のおかげです」とスコヴィル氏は言っています。

NASA とその諸計画に関する詳細については、次のウェブページをご参照下さい:
http://www.nasa.gov


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図1: すばる望遠鏡とスピッツァー宇宙望遠鏡で撮られた、爆発的な星形成を行っている銀河の写真。左から、すばる望遠鏡による可視光・短波長 (青色) の画像 (B バンド、波長約 0.45 ミクロン)、同じくすばる望遠鏡による可視光・長波長 (赤色) の画像 (i'バンド、波長約 0.76 ミクロン)、スピッツァー宇宙望遠鏡による赤外線の画像 (波長約 3.6 ミクロン)。短い波長では何も見えないものが、波長が長くなるにつれて明るく見えることが分かる。十字はモンスター銀河に付随する電波源の位置である。


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図2: 図1のうちすばる望遠鏡による可視光・長波長 (赤色) の画像 (i'バンド、波長約 0.76 ミクロン) とスピッツァー宇宙望遠鏡による赤外線の画像 (波長約 3.6 ミクロン) のみを示したもの。十字はモンスター銀河に付随する電波源の位置。


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図3: 図1の三つの画像をそれぞれの波長ごとに分けたもの。左から、すばる望遠鏡による可視光・短波長 (青色) の画像 (B バンド、波長約 0.45 ミクロン)、同じくすばる望遠鏡による可視光・長波長 (赤色) の画像 (i'バンド、波長約 0.76 ミクロン)、スピッツァー宇宙望遠鏡による赤外線の画像 (波長約 3.6 ミクロン)。


  本研究成果は米国天文学会誌である『天体物理学ジャーナル [The Astrophysical Journal (Letters)]』誌の7月10日号に 掲載されました。

本研究には愛媛大学から

  • 谷口 義明 (宇宙進化研究センター センター長)
  • 塩谷 泰広 (宇宙進化研究センター 研究員)
  • 佐々木 俊二 (理工学研究科 大学院生)
の3人が参加しました。




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