観測成果

92億光年離れた電波銀河の姿

1999年9月16日


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【観測条件】
天 体 名: 電波銀河 B3 0731+438
使用望遠鏡: すばる望遠鏡 (有効口径 8.2 m)、カセグレン焦点
使用観測装置: CISCO (近赤外線カメラ)
フィルター: N 225 (赤)、K' (青)
カラー合成: 青 (K')、緑 (K'+N225),赤 (N225)
観 測 日 時: 世界時1999年2月28日
露 出 時 間: 48 分 (N225)、32 分 (K')
視   野: 8.4 秒角× 12.1 秒角 (右図)
画像の向き: 北が上、東が左
位   置: 赤経 (J2000.0) = 7 時 35 分 22 秒 赤緯 (J2000.0) = +43 度 44 分 (やまねこ座)

【説 明】
  電波銀河とは特に強力な電波を発している銀河のことをいい、その中心には活動銀河核と呼ばれる特異な天体があると考えられている。この活動銀河核は太陽より100万倍以上も重い超巨大ブラックホールであり、そこに周囲のガスなどの物質が落ち込むことにより莫大な重力エネルギーを解放して輝いているとされている。しかし周囲を囲むガスや塵の雲のために、活動銀河核を直接見ることはできない。

  地球から 92 億光年離れた電波銀河 B3 0731+438 の活動銀河核は、相対する2方向にジェットと呼ばれるガスなどの物質を毎秒数千キロメートルもの猛スピードで吹き出しており、その方向にだけ周りを覆うガスや塵の雲に穴が開いている。すばる望遠鏡に取り付けた近赤外線カメラ CISCO による今回の観測では、この穴からもれ出る活動銀河核の強力な紫外線により周囲の水素のガスが励起されて輝いている様子を初めて鮮明に捉えることに成功した。その姿は、2本の腕がそ れぞれ2方向に伸びたような特異な形をしていていることがわかる。これは電波銀河を取り囲む水素のガス中をジェットが突き抜けた際、ガスが押しやられて円錐形に空洞ができているためと考えられる。

  これほど遠方の電波銀河で、このような水素ガス雲の構造が詳細に写し出されたのは、すばる望遠鏡の観測が初めてのことである。今後、中心にある活動銀河核の性質や電波銀河の生成のメカニズムを明らかにしていく上で、重要な手がかりとなると期待されている。

【補 足】
  このような遠方の天体は、宇宙膨張により地球から高速に遠ざかっている。そのため光のドップラー効果により、本来 6563 オングストロームの水素輝線は、92 億光年遠方のこの天体から地球に届く時には 22500 オングストローム (2.25 ミクロン) の波長まで伸びた赤外線として観測される。今回の観測では、2.25 ミクロンの狭帯域フィルターにより水素輝線で光っているガスを写し、2.13 ミクロンの広帯域フィルターにより連続光の像を写した。これらの画像を合成することにより、白い点状に見えている周囲の銀河や星に対し、電波銀河の水素のガスがオ レンジ色に浮き上がった。


補足説明 (JPG 104 KB) / 補足説明 (PDF 233 KB)

参考星図 (PDF 155 KB)

 

 

 

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