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「第9惑星」とすばる望遠鏡

2016年1月25日 (ハワイ現地時間)
最終更新日:2023年9月21日

2016年1月20日、米国・カリフォルニア工科大学からの記者発表が世界の人々を驚かせました。数学的なモデルと計算機シミュレーションにより、太陽系外縁部に地球よりも重い「第9惑星」が存在することが示唆されたというのです。本当にそのような天体がいるのであれば、太陽からの距離はかなり遠いものとなります。

「第9惑星」とすばる望遠鏡 図

図: 夕日を受けるすばる望遠鏡 (左) と隣のケック天文台 (中央・右) のドーム。すばる望遠鏡に搭載された超広視野主焦点カメラ HSC が、「第9惑星」をはじめとする太陽系天体の探査にも威力を発揮します。またケック天文台も将来、強力なレーザーで作った人工星を使った観測により、今後見つかるかもしれない「第9惑星」の性質を詳しく調査することに貢献すると期待されています。(クレジット:国立天文台)

カリフォルニア工科大学のコンスタンティン・バティジンさんとマイク・ブラウンさんは、太陽系の中でも外側の方にあるいくつかの天体が、集団として興味深い動きをすることに注目し、その原因を突き止めようとしました。そしてこの集団の運動を支配する別の天体が太陽系外縁部にあると仮定すると、うまく説明できると結論づけたのです。シミュレーションによると、その天体は地球より 10 倍以上も重く、海王星よりもおよそ 20 倍遠い軌道を 1-2 万年かけて公転していると示唆されます。

過去にも太陽系外縁部に惑星級の天体があることを示唆する研究がありました。例えば2008年に当時神戸大学のパトリック・ソフィア・リカフィカ研究員と向井正教授 (現名誉教授) が、同様の天体の存在を指摘した論文もその一つです。これらの研究は、天文学でも長い伝統を持つ天体力学の成果とも言えます。

今回の研究成果を発表したカリフォルニア工科大学の研究者たちは、「第9惑星」の軌道情報を出しています。彼ら、いや彼らばかりでなくこの分野の研究者たちは、最新の観測設備を使ってこの天体が実際に存在することを突き止めたいと勢いづいています。

惑星科学研究の世界的なリーダーである国立天文台副台長の渡部潤一さんは「この種の天体を捜索する最も能力の高い大型望遠鏡は、すばる望遠鏡である」と指摘します。すばる望遠鏡には、満月9個分に相当するきわめて広い範囲を一度に撮影できる超広視野主焦点カメラ HSC が搭載されています。とても暗くどこにあるのかよくわかっていない天体を見つけ出す観測に、間違いなく威力を発揮します。

実際、ブラウンさんはすばる望遠鏡のヘビーユーザーの一人であり、太陽系天体探査を集中的に行っています。ブラウンさんは2016年3月に再びマウナケアを訪れ、すばる望遠鏡 HSC で観測する予定です。

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