すばる望遠鏡
: ホーム : 観測成果 : 2002年 : 9月29日
年老いた星に見つかった「弾丸」と「角」のような構造
AFGL618 画像
イメージ (368KB)

観測者: 植田 稔也、デヴィッド フォン、マーガレット マイクスナー (イリノイ大学アーバナ・シャンペイン校天文学部)
天体名: 双極惑星状星雲 AFGL 618
位置: 赤経 04h42m53.6s、赤緯 +36d06m53.6s (ぎょしゃ座)
使用望遠鏡: すばる望遠鏡 (有効口径8.2m)、カセグレン焦点
使用観測装置名: IRCS (近赤外線分光撮像装置)
フィルター: Jバンド (1.3 +-0.2microns), Hバンド (1.6 +-0.3 microns), K'バンド (2.1 +- 0.4 microns), 水素分子輝線 (2.12+-0.03 microns)
観測日: 世界時2001年2月5日
視野: 23.2 秒角 x 14.5 秒角
分解能: 0.058 秒角/ピクセル
画像の向き: 北が上、東が左
地球からの距離: 約450 光年 (許容範囲 280〜630 光年)

 イリノイ大学の植田稔也さんと研究グループは、 すばる望遠鏡の近赤外線分光撮像装置 IRCS による観測から、 年老いた星AFGL 618 の周りに「弾丸」や「角」に似た構造を発見しました。 可視光よりも波長の長い近赤外線によって、これらの構造を捉えたのははじめてのことです。 今回の高分解能で高感度な観測から、 太陽のような中位の質量を持った星が年老いていく複雑な過程について、 新たな知見が得られたといえます。

 すばるが観測した AFGL 618 は、双極惑星状星雲の中でも、 最も重要な天体として知られています。この年老いた星は、 惑星状星雲とは言っても地球のような惑星ではなく、 年老いた星とその星からかつて放出されたガスやチリからなる天体のことです。 特に AFGL 618 は星雲が2つの方向に伸びていることから、 双極惑星状星雲と呼ばれています(図では、左右の方向)。 研究グループは、この星雲の両端に「弾丸」と「角(つの)」のような構造を発見しました。

 図の中で右方向の星雲の先にある3つの点が、 「弾丸」と呼ばれるところです(一番上は、非常に淡い)。 一方の「角」は、左方向の星雲の先から、2本伸びているところを指します。 中央のくびれは星雲の「腰」にあたり、 濃いチリが中心星を隠しているため、くびれているように見えているのです。 「弾丸」や「角」が星雲の端にあることは、 中心の年老いた星から高速に飛び出たガスが、 過去に放出されたガスやチリに衝突して形成されたことを示しています。

 植田さんたちの研究グループは、 「弾丸」と「角」を作った衝突現象によって、 星雲の形が双極になったと考えています。 同研究グループによるアリゾナ州・キットピークにある ウィスコンシン・インディアナ・イェール・NOAO(*) (WIYN) 望遠鏡を用いた最新の観測も、この仮説を支持しています。 さらに北カリフォルニアにある バークレー・イリノイ・メリーランド連合 (BIMA) 電波干渉計でも、 研究グループはこの天体の観測を実施しています。 BIMA の観測は、AGFL 618 の周りにあるチリを透過して、 内部の分子ガスの構造を直接見ることのできる長い波長の電波を用いました。 研究チームは、すばるとこれらの観測結果から、「弾丸」と「角」の謎が解明されるだろうと述べています。

 (*) NOAO=National Optical Astronomy Observatory:米国国立光学天文台

 


2002年9月29日
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