すばる望遠鏡
赤外線で見た深宇宙 すばるディープ・フィールド

低解像度(322 KB)
高解像度(2.0MB)

【観測条件】
天 体 名: すばるディープ・フィールド
使用望遠鏡: すばる望遠鏡(有効口径8.2m)、カセグレン焦点
使用観測装置: CISCO (近赤外線カメラ)
フィルター: Jバンド (1.25ミクロン )、K'バンド (2.13ミクロン)
カラー合成: 青 (Jバンド)、緑 (J+K'バンド)、赤 (K'バンド)
観 測 日 時: 世界時1999年4月〜6月(4/3,4,29,30; 5/1,2,6,7,8,11,27; 6/6,7,9)
露 出 時 間: 12.1時間(Jバンド)、9.7時間(K'バンド)
視   野: 約2分角
画像の向き: 北が上、東が左
位   置: 赤経(J2000.0)=13時24分21.3秒、赤緯(J2000.0)=+27度29分23秒 (かみのけ座)
【説 明】
銀河系の円盤に対して垂直な方向は、銀河系内の星や星間塵などが少なく、それ らの影響を受けにくいため、はるか遠方の宇宙の観測に適している。特にすばる 望遠鏡のあるハワイからの観測の場合、銀河系の北極方向の天体はほぼ天頂を通 過する。そのため大気揺らぎによる影響が少ないだけでなく、長時間にわたる観 測が可能である。すばる望遠鏡では、このように遠方の宇宙に関する研究を行う 特定の領域「すばるディープ・フィールド」を設け、多方面にわたる観測を進め る計画である。

 この画像は「すばるディープ・フィールド」の最初のデータである。銀河系の北 極の方向、かみのけ座銀河団より約6度東の、一見星も何も見えない領域を、す ばる望遠鏡に取り付けた近赤外線カメラ CISCO により2つの赤外線の波長帯で 長時間観測し、それらの画像を合成した。その結果、赤外線の広域画像としては、 最も暗い天体まで写すことに成功した。

 画像中の青く暗い天体は近傍(約30億光年)にある若い小さい銀河であり、赤色 の暗い天体は主に70億光年程度までに分布するかなり年老いた銀河であると考 えられる。一方、白色の暗い天体は、100億光年を超える非常に遠い天体である と思われるが、それを確認するためには可視光による観測がさらに必要である。 また最も赤い色の天体のいくつかは、塵に覆われたかなり特殊な天体である可能 性がある。

 このような赤外線画像は、天体から出た可視光が宇宙膨張により赤方偏移し、赤 外線としてとらえられたものである。そのため、100億光年を超えるような遠方 宇宙の研究には不可欠な情報である。実際にこの画像に写る暗い天体の多くは、 100億光年を超える遠方に位置するものと考えられる。今後、すばる望遠鏡の可 視光の観測装置や赤外の分光装置を用いて個々にとらえられた天体の性質を調べ ていくことにより、そのような宇宙初期の時代からの天体の形成や銀河の進化の 様子を詳しく知ることができるものと期待されている。

参考星図(PDF, 143 KB)

 


1999年9月16日
92億光年離れた電波銀河の姿

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高解像度(340 KB)

【観測条件】
天 体 名: 電波銀河 B3 0731+438
使用望遠鏡: すばる望遠鏡(有効口径8.2m)、カセグレン焦点
使用観測装置: CISCO (近赤外線カメラ)
フィルター: N225 (赤)、K' (青)
カラー合成: 青 (K')、緑 (K'+N225) 、赤 (N225)
観 測 日 時: 世界時1999年2月28日
露 出 時 間: 48分(N225)、32分(K')
視   野: 8.4秒角×12.1秒角 (右図)
画像の向き: 北が上、東が左
位   置: 赤経(J2000.0)=7時35分22秒 赤緯(J2000.0)=+43度44分 (やまねこ座)
【説 明】
 電波銀河とは特に強力な電波を発している銀河のことをいい、その中心には活動銀河核と呼ばれる特異な天体があると考えられている。この活動銀河核は太陽よ り100万倍以上も重い超巨大ブラックホールであり、そこに周囲のガスなどの物 質が落ち込むことにより莫大な重力エネルギーを解放して輝いているとされている。しかし周囲を囲むガスや塵の雲のために、活動銀河核を直接見ることはできない。

 地球から92億光年離れた電波銀河 B3 0731+438 の活動銀河核は、相対する2 方向にジェットと呼ばれるガスなどの物質を毎秒数千キロメートルもの猛スピー ドで吹き出しており、その方向にだけ周りを覆うガスや塵の雲に穴が開いている。 すばる望遠鏡に取り付けた近赤外線カメラ CISCO による今回の観測では、この 穴からもれ出る活動銀河核の強力な紫外線により周囲の水素のガスが励起されて 輝いている様子を初めて鮮明に捉えることに成功した。その姿は、2本の腕がそ れぞれ2方向に伸びたような特異な形をしていていることがわかる。これは電波 銀河を取り囲む水素のガス中をジェットが突き抜けた際、ガスが押しやられて円 錐形に空洞ができているためと考えられる。

 これほど遠方の電波銀河で、このような水素ガス雲の構造が詳細に写し出された のは、すばる望遠鏡の観測が初めてのことである。今後、中心にある活動銀河核 の性質や電波銀河の生成のメカニズムを明らかにしていく上で、重要な手がかり となると期待されている。

【補 足】
 このような遠方の天体は、宇宙膨張により地球から高速に遠ざかっている。その ため光のドップラー効果により、本来6563オングストロームの水素輝線は、92 億光年遠方のこの天体から地球に届く時には22500オングストローム(2.25ミク ロン)の波長まで伸びた赤外線として観測される。今回の観測では、2.25ミクロ ンの狭帯域フィルターにより水素輝線で光っているガスを写し、2.13ミクロン の広帯域フィルターにより連続光の像を写した。これらの画像を合成することに より、白い点状に見えている周囲の銀河や星に対し、電波銀河の水素のガスがオ レンジ色に浮き上がった。


補足説明(JPG, 104 KB) / 補足説明(PDF, 233 KB)

参考星図(PDF, 155 KB)

 


1999年9月16日
環状星雲を包む微かなハロー

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【観測条件】
天 体 名: 惑星状星雲M57
使用望遠鏡: すばる望遠鏡(有効口径8.2m)、カセグレン焦点
使用観測装置: Suprime-Cam (可視光広視野カメラ)
フィルター: Hα(0.65ミクロン), B(0.45ミクロン), V(0.55ミクロン)
カラー合成: 青 (B), 緑 (V), 赤 (H alpha)
観 測 日 時: 世界時1999年5月14・23日、6月15日
露 出 時 間: 25分(Hα), 6分 (V), 40分 (B)
視   野: 3 x 4 分角
画像の向き: 北が上、東が左
位   置: 赤経(J2000.0)=18時53分36秒 赤緯(J2000.0)=+33度02分 (こと座)
【説 明】
 こと座にある惑星状星雲 M57(NGC 6720)は、地球から約 1600 光年の距離 にあり、その形から環状星雲(リングネビュラ)と呼ばれている。惑星状星雲と は、望遠鏡で見るとコンパクトながら大きさや模様を持ち、一見惑星のように見 えることからそのように呼ばれている星雲である。しかし実際は、星が死ぬ間際 の姿である。

 この環状星雲は、中心星の周りにドーナツのようなリング(環)を持つ惑星状星 雲である。今までの観測から、くっきりとしたリングの周りには微かな光を放射 するハローと呼ばれる構造があることがわかっていた。しかしハローは極めて淡 く観測が困難であるため、その詳しい構造はわかっていなかった。

 すばる望遠鏡に取り付けた可視光広視野カメラ Suprime-Cam による観測では、 高い分解能と大きな集光力により、環状星雲のリングや、特にハローの微細構造 をこれまでになくはっきりと写し出すことに成功した。このようなデータから環 状星雲の構造だけでなく、赤色巨星からの周期的なガス放出の様子が解明される と期待されている。

 <惑星状星雲> 星はその質量により、進化の最終段階における振る舞いが決まる。太陽の質量の 約 0.8倍から8倍くらいの星は、中心の水素を燃やしつくすと外層が膨張し、巨 大な赤色巨星へと進化する。そして膨らんだ外層のガスの大部分は、周囲に流出 し広がってゆく。外層がごくわずかになると星本体は収縮を始め、高密度の白色 わい星へと進化して行く。さらに収縮により表面温度が数万度以上になると、星 はエネルギーの高い紫外線を放射し始める。惑星状星雲は、この中心星の紫外線 により、赤色巨星の時代に放出され周りへ広がってゆくガスの雲が熱せられ、電 離して光っている状態である。その形は、いろいろな段階で中心星から放出され たガスの分布、中心の白色わい星からの紫外線強度、星雲を見る方向など様々な 要因により決まる。惑星状星雲の一つ一つが極めて多様で美しい形を示すのは、 そのためである。

【左図】
 この図はHα(水素原子が放出する赤い光、中心波長は6563 オングストローム) の輝線を観測した画像に、疑似カラー処理を行ったものである。この図から中央 に明るく輝くリングは一様ではなく、複雑かつ微細な構造を持つことがわかる。 リングの大きさ(長径)は約0.7光年であり、中に見える2つの星のうち、中心に 位置する星が環状星雲を光らせている白色わい星(中心星)である。

 リングの外側にあるハローは、今回初めて明瞭にとらえられた。バラの花びらの ような多数のループ構造を持つ内側ハローと、その外側に広がる淡い外側ハロー からなることがわかる。リングと内側ハローはやや細長い楕円だが、外側のハ ローはほぼ円形である。ハローの大きさは内側ハローの長径が約1.2 光年、外側 ハローの直径が約1.8光年である。内側ハローの中には、さらに小さいループや 太く濃いフィラメントと呼ばれる構造がはっきりと見える。またガスが冷えて 凝縮して行く過程と考えられている多数の小さな固まり(ノット)が、内側・外 側ハローの中に存在しているのがわかる。このような2つのハローを構成するガ スが放出された時期は、まだはっきりとわかっていない。

 従来、環状星雲は球殻からなると考えられていた。しかしこのような多重のハロー の存在から、より複雑な構造を持つことが示された。

【右図】
 この図では、3つのフィルターで観測した画像を実際に見える色に近い配色に合 成した。ハローは淡くなっているが、リングの微細な構造がよりはっきりと見え るように処理をしてある(最大エントロピー法)。左図では見えなかった細かい フィラメントやシミのような構造があることがわかる。

補足説明(JPG, 72 KB) / 補足説明(PDF, 602 KB)

参考星図(PDF, 143 KB)

 


1999年9月16日
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