主焦点カメラ Suprime-Cam
(Subaru Prime Focus Camera)
大気の揺らぎを克服する

すばるは口径8メートル級の望遠鏡の中で、唯一視野の非常に広い主焦点を持つ望遠鏡です。この観測装置は4096x2048画素という大きなCCDを10個も並べた、8000万画素のすばる主焦点用のデジタルカメラで、満月とほぼ同じ大きさの34分角x27分角という広い視野を一度に撮影することができます。広い天体を能率良く観測することで、銀河の誕生と進化や宇宙の構造の研究、太陽系外縁部の小天体の探索などに威力を発揮する装置です。
3万個の銀河をとらえる

主焦点カメラは、満月に匹敵する広さの視野をもちます (図左)。しかも、感度や解像度にも妥協はありません。この画像には、肉眼で見えるよりも1億倍暗い天体まで写っています。この画像の中で明るく見えるのは、私たちの銀河系の中にある星たちです (スパイク状に見える線は、星の強い光が他のCCD画素にあふれ出したことによる人工的なものです)。しかし、それ以外のほとんどの天体は、他の銀河たちで、その数は3万個にも達します。この画像には、新しい銀河団が発見されました (拡大図は右)。この銀河団の距離は、約50億後年と推定されています。
観測成果:Suprime-Cam による広視野カラーイメージ (2000年11月14日)
宇宙誕生から10億年後の銀河の姿

LAE J1044-0130:この小さく、淡い天体は地球から約126億光年離れたところにある銀河です。この銀河は宇宙が誕生してから10億年もたたないうちに、急速に恒星が形成されたことを示す証拠となっています。非常に遠くにある銀河は地球からの距離に比例して特定の波長で明るく輝いています。この波長の光を選び出す特別なフィルターを使ってこのような銀河を探します。広視野を持つ主焦点カメラは宇宙初期の銀河を見つけるのに最適な装置です。
観測成果:すばるが宇宙の果てにある爆発銀河を発見
(2002年8月8日)
リング星雲(M57)を包む微かなハロー

星が最期を迎える時、質量の小さい星も大きい星も多くのガスや塵を宇宙空間に放出します。太陽の約0.8倍から8倍の質量の軽い星は、膨張と収縮を繰り返し、質量の大部分を失って最期を迎えます。主焦点カメラはリング星雲の波紋や外郭を鮮明にとらえました。
観測成果:環状星雲を包む微かなハロー (1999年9月16日)
コラム:主焦点カメラ
主焦点カメラは一言で言うと、非常に暗い天体を観察するための超巨大デジカメです。ご存知のとおり、すばる望遠鏡は、世界の8メートル級の中で最も広い視野を一度に撮影できる主焦点を持ちます。その主焦点を生かさずにすばるの特長を出すことはできない、というのが主焦点カメラを作った最大の理由です。主焦点カメラを用いれば、夜空の広い領域を、非常に暗い天体まで、一度に撮影することができます。
しかし、主焦点は非常に広い視野を持つという特徴がある反面、望遠鏡や観測装置に要求される制度が非常に高く、製作は容易ではありません。このような難事業に挑戦したのは、世界中ですばるだけだったのです。道は険しかったのですが、その甲斐あって、主焦点カメラは世界の中でも非常にユニークな装置として活躍していて、すばるの特長の一つとなっているのです。
観測装置の故障はどの世界にもつきもので、観測中に故障が起きないように、日頃メンテナンスに努めています。しかしトラブルは起きるもの。いったん観測中に故障が起きると主焦点カメラを修理するのは非常にたいへんなことです。主焦点は望遠鏡の筒先にあるため、修理をするためにはクレーンのようなものに乗って、10メートルくらいの高さまで登って行かなければなりません。しかも手探りの作業も多く、とても神経を使います。
(主焦点カメラサポートアストロノマー小宮山裕さんとの2002年末のインタビューより)
補償光学の将来計画:
現在のAOを用いた観測と並行して、改良計画も進行中です。一つ目は、可変形鏡のアクチュエーター数を増やし、シーイングが悪い時にも、ゆらぎをより補正できるようにすることです。二つ目が、レーザーガイド星の導入です。現在のAOでは、観測したい天体の近くに明るい星(ガイド星)が必要で、夜空のほんの少しの天体に対してしか、大気ゆらぎをうまく補正できません。レーザーを上空90kmにあるナトリウム層に照射して、夜空に人工的にガイド星を作れば、それを用いて、大部分の天体に対して、大気ゆらぎを補正できるようになります。